米中間選挙 分断はなおも深まるのか

11月8日 09:29

 「米国第一主義」で保守層の支持を集める一方、過激な発言で社会の分断や憎悪をあおるトランプ大統領に、米国民は厳しい審判を突きつけた。

 注目の中間選挙は、改選議席の関係でもともと有利だった共和党が上院を制したものの、下院は野党の民主党が多数派を奪還し「ねじれ議会」となった。看板の「米国第一主義」の是非が問われた選挙で強さを示せなかったことは、トランプ氏にとって大きな不安材料だろう。強硬な政権運営が失速し、機能不全になる恐れもある。

 中間選挙は現職大統領の政策を国民が評価する場とされ、与党に厳しい結果が出ることが多い。今回は期日前投票が激増するなど国民は切実な関心を寄せた。各界で明らかになったセクハラ問題を受けた女性の意識の高まりや、ミレニアルと呼ばれる若者世代のかつてない参加が原因と指摘される。

 選挙戦で、トランプ氏は民主党議員を「知能指数が低い」などと口汚く中傷した。しかし、10月下旬に自身の支持者による民主党有力者を狙った爆弾郵送事件やユダヤ人銃撃事件が発生すると批判の矛先が向けられ、防戦を余儀なくされた。側近らは経済の好調ぶりを強調するよう助言したが、トランプ氏は選挙の終盤、かねて主張してきた不法移民対策に的を絞って保守層に結束を訴えた。

 民主党はオバマ前大統領らがトランプ氏の強引な政権運営によって社会の分断が深まったと批判。女性や若者のほか、黒人やヒスパニック(中南米系)ら少数派の取り込みに力を注いだ。有権者の関心が高い医療保険制度にも焦点を当て、制度の廃止をもくろむ共和党に対して社会的弱者を守る姿勢を強調した。

 この2年、トランプ政権は同盟関係を無視した保護主義的な経済政策を進める一方、外交・安全保障では在イスラエル大使館のエルサレムへの移転、地球温暖化防止のためのパリ協定やイラン核合意からの一方的な離脱など国際協調に反する行動を取ってきた。

 新議会は来年1月に開会し、トランプ氏が提唱するメキシコ国境の壁建設などが争点となり、紛糾が予想される。上院は共和党が多数派を維持したことで、ロシア疑惑でトランプ氏が「有罪」となる道はふさがれた。ただ民主党は、下院の召喚権限を駆使し疑惑を厳しく追及する構えだ。

 下院で弾劾手続きが始まったりすれば、2020年の次期大統領選で再選を目指すトランプ氏は、支持者にアピールしようと一層の分断戦略に走りかねない。中国や北朝鮮との関係でも、日本を尻目に「米国第一」で妥協点を探ることが考えられる。

 安倍政権には米国に追随する姿勢が目立つが、国際秩序が大きく揺らぐ中、これを座視すれば日本にも大きな火の粉が降り掛かってこよう。米国に対して民主主義や自由貿易、法の支配、国際主義などをもっと強く主張すべきだ。それこそが不透明な国際社会での日本の責務だ。