就活ルール廃止 学生の不安解消が最優先だ

10月11日 09:21

 経団連は9日、大手企業の採用面接などの解禁日を定めた指針を、2021年春入社の大学生・大学院生から廃止することを正式に決めた。1953年から約70年続いてきた就職活動の「目安」が、いったんなくなることになる。

 政府は学生らの不安に配慮し、21年入社組までは現行の就活日程を維持する方向だ。その後に関しては政府主導で新たなルールづくりを進めることになった。

 とはいえ、経団連の関与が薄まれば、いかなるルールを設けても有名無実となり、就活の早期化・長期化が進んでしまう恐れがある。そうなれば学生の本分である学業への影響も避けられまい。新たな就活ルールの議論は大学側や経済界も参加する関係省庁連絡会議で15日から始まるが、学生の不安解消を最優先の課題として、適切なルールの策定を急いでもらいたい。

 現在の就活は、経団連の指針に基づいて大学3年生の3月に企業説明会が始まり、4年生の6月に採用面接が解禁、10月には内定が解禁される、という日程で進められている。

 しかし、経団連に加盟していない新興企業や外資系企業が前倒しで採用に動くことも多く、人材獲得競争で不公平感が強いとの声があった。罰則がないため加盟企業による「解禁破り」も後を絶たず、ルールの形骸化も指摘されていた。経団連が指針の廃止に踏み切った背景には、こうした現状があろう。

 さらに、就活のルールは日本特有の慣行として根付く新卒一括採用や終身雇用、年功序列型賃金などとも連動している。世界では国境を越えた人材争奪が激化し、通年採用も一般的なだけに、日本のグローバル企業には国内のルールに縛られていては太刀打ちできないとの危機感が強い。新卒一括採用や終身雇用など雇用制度全体の改革は、政府の未来投資会議で議論されることになる。

 ここで留意したいのは、新卒採用をするのはグローバル企業だけではないということだ。通年採用が一般化すれば、中堅・中小企業にとっては厳しい採用環境となる。人気の高い大手の採用枠が完全に埋まるまでは、学生の目が中堅・中小に向かなくなる恐れもあるからだ。

 また、採用の多様化が進むことで、企業間だけでなく学生同士の間で格差が広がる懸念もある。期間が限られていればこそ横並びの就活ができるが、期間が拡大すればするほど就活に充てる時間に余裕がある学生と、そうでない学生に分かれよう。地理的な制約もある地方の学生はなおさら不利になりかねない。

 就活ルールの最適解を見いだすのは容易ではなかろうが、学生が学業に専念できる環境をまず整えた上で、就活も安心してできるようにすることが求められる。さらに、中堅・中小企業への配慮も必要だ。こうしたことが長期的には個々の企業、ひいては日本経済全体の利益となろう。