自民総裁選・経済政策 実質論に踏み込むべきだ

9月16日 09:15

 自民党総裁選は後半戦に入ったが、14日の討論会を見る限り経済論戦は低調と言わざるを得ない。事実上、首相を決める選挙であり、経済の現状や展望といった実質論に踏み込むべきだ。

 安倍晋三首相(総裁)には、自身の看板政策アベノミクスの足らざるところをいかに補っていくのか、丁寧な説明を求めたい。個人の豊かさを追求するとして政策展開の舞台を地方、中小企業、農林水産業に求める石破茂元幹事長には、目指す経済の将来像と実現への具体策を提示してもらいたい。

 高度成長を続けた末にバブルが崩壊、その後、失われた20年を経て日本経済はデフレに陥った。政府はこの間、財政を拡大。日銀は金融を大幅に緩和し、ようやくデフレ脱却が展望できるところまできた。

 財政、金融のてこ入れはアベノミクスに負うところが大きい。安倍首相が強調するように、確かに為替は円安基調になり、企業収益は拡大、株価も上がり、雇用情勢も大きく改善した。

 しかし、内実はどうか。輸出型企業の好業績は堅調な海外需要への依存度が高い。企業の内部留保は増える一方、個人の可処分所得は伸び悩んでいる。良好な経済指標とは裏腹に、基礎体力は衰えているのではないか。

 さらに言えば、財政、金融ともに考え得る政策を出し尽くした感がある。日米ともに景気拡大局面が続いているが、過去の景気循環から考えれば、そろそろ減速を警戒しなければならない。だが、財政にも金融にも政策出動の余地が極めて乏しくなっている。

 アベノミクスに一定の効果があったことは認めるが、今問われているのは金融政策に過度に頼った末に顕在化した副作用の克服だ。安倍首相は14日の討論会で、金融緩和の長期化に否定的な考えを示し正常化の必要性に触れた。

 首相が金融緩和の限界を意識していることを表明したのは前進と受け止めたい。高齢者の雇用促進を中心にした社会保障制度の見直しも、政策の方向性は間違っていないだろう。だが、財政再建や個人の可処分所得増に向けた強い決意や具体策についてはこれまでのところ言及はない。

 石破元幹事長が打ち出した経済政策の根幹は、大企業や都市部の富裕層が潤えば富が全体に行き渡るというトリクルダウン的政策の否定で、アベノミクスの逆だ。

 石破氏は、地方や中小企業、農林水産業の潜在力を最大限に引き出すという。大胆な税制や規制緩和などによる誘導が想定されるが、具体的にどう実際の政策に反映させていくのか、現実論をもっと聞きたいところだ。

 政策の比重をより地方や中小企業などに傾ければ、日本経済の可能性を広げることにつながる。しかし経済活動の規模などから、その効果には限界もあるのではないか。中央や大企業にたまった富が拡散していくはずの経路に発生している目詰まりを解消する視点が欠かせないはずだ。