プーチン大統領発言 真意確かめ戦略再構築を

9月15日 09:24

 ロシアのプーチン大統領が、極東ウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムで、安倍晋三首相に対し、一切の前提条件抜きで今年末までに日ロ間の平和条約を結ぶことを提起した。

 プーチン氏は「その後、全ての係争中の問題を解決しよう」とも呼び掛けた。事実上、懸案の北方領土問題を棚上げにする提案とも受け取れる。日本としては受け入れられるものではない。

 日本は北方四島の帰属問題を解決して平和条約を締結することを基本方針としている。10日の日ロ首脳会談でも、北方四島での信頼関係の醸成に向け共同経済活動の実施について協議したばかりだった。菅義偉官房長官によると、会談ではプーチン氏から今回のような発言は一切なかったという。

 なぜ、プーチン氏は日本が簡単に受け入れられない提案を唐突に行ったのか。日本政府は、年金の受給年齢引き上げで支持率が急落しているプーチン氏が、ロシア国内向けに発言した側面が強いと分析している。しかし、国際会議の公式な場での発言は極めて重く、今後の事務レベル協議を縛るものになるだろう。真意を確かめ、領土交渉を前進させるよう外交戦略を再構築する必要がある。

 北方四島について、プーチン氏は第2次大戦の結果、ロシア領になったとする立場だ。経済フォーラムでは、平和条約締結後に色丹島、歯舞群島を引き渡すとした1956年の日ソ共同宣言を巡り、「日本側が履行を拒否した」とも述べた。その意図は判然としないが、プーチン氏はこれまで、返還後の北方領土に日米安全保障条約が適用されることに懸念を示している。発言は、北方四島の帰属問題に関して厳しい姿勢を示したとみるのが妥当だろう。

 安倍首相は2016年12月、山口県長門市での日ロ首脳会談で、北方四島で共同経済活動を実施することにより「未来図」を描き、解決策を見いだしていく方針を打ち出した。しかし、その後の2年近い交渉でも、海産物養殖や観光ツアー開発といった5項目の共同経済活動は、適用する法的な枠組みなどを巡って協議が難航し、具体的な進展はないままだ。

 安倍首相は通算22回もプーチン氏と会談。「私たちの手で必ず問題に終止符を打つ」と交渉前進を強調してきたが、行き詰まっているのが実態ではないか。交渉の実態を丁寧に説明すべきだろう。

 プーチン氏の提案は、中国の習近平国家主席ら各国首脳が居並ぶ中で飛び出した。安倍首相はすぐに日本の立場や考え方を説明すべきではなかったか。首相は帰国後、「条約締結への意欲の表れ。北方四島の帰属を解決し、平和条約を締結する基本に変わりない」と述べたが、その対応には与野党から批判の声が上がっている。

 自民党総裁選で首相は「戦後日本外交の総決算」を掲げる。平和条約が締結できれば、それにふさわしい成果と言えようが、領土問題を棚上げにしたままでは国民の理解は到底得られまい。