日ロ首脳会談 交渉経過の説明が必要だ

9月12日 09:09

 安倍晋三首相は10日、ロシア極東ウラジオストクでプーチン大統領と22回目の首脳会談に臨んだ。北方領土での共同経済活動の実現に向けたロードマップ(行程表)で合意。日本が10月初めに現地へ調査団を派遣することでも一致した。しかし、4島は自国領だとするロシアの姿勢に変化はなく、肝心の領土交渉は依然として先行き不透明だ。

 首相は共同経済活動をてこに、領土問題の解決と平和条約交渉を進展させたい考えだ。今回の会談は自民党総裁選の最中に行われたこともあり、得意のロシア外交で存在感を発揮する狙いもにじんだ。会談後の記者会見では「4島の未来像を共に描く作業の道筋がはっきりと見えてきた」「私たちの手で必ず問題に終止符を打つ」と自信と意欲を見せた。

 だが、日本が「領土交渉」と位置付ける実務レベルの平和条約交渉は、2016年夏から途絶えたまま。ロシア側は、法的立場を損なわずに共同経済活動に参加できるようにする「特別な制度」の導入にすら難色を示している。

 会談後の記者会見でも、プーチン氏は共同経済活動に関し「住民の『自由な活動』について協議を続けている」、平和条約についても「双方が受け入れ可能な解決策を模索する用意がある」と慎重な言い回しに終始した。これでは、4島返還を切望する元島民らが不満の声を上げるのも無理はない。

 ロシアとしては、欧米から厳しい経済制裁を受けている間は、北方領土問題で日本に大幅な譲歩をする余地などないのだろう。ただ一方で、欧米とは一線を画してロシア重視の姿勢を貫いている日本を重要な存在と位置付けていることも事実だ。安倍政権が続いている間に、できるだけ多くの経済協力を得て国民生活の改善につなげたいとの思惑も透ける。

 首相はこれまで、領土交渉など解決が難しい問題では首脳同士の信頼が必要だと繰り返し述べてきた。では、その手法はどれほど機能しているのか。水面下で進む交渉の経過をすべて明かすことは難しかろうが、可能な限り国民に現況を示し、理解を求めることも政権の責務ではないか。これまでの経緯を冷静に検証し、実効性の高い交渉へと修正する必要もある。

 北方領土での共同経済活動は、海産物養殖、温室野菜栽培、観光ツアー開発、風力発電の導入、ごみ減らし対策の5項目で実施することが決まっている。今回の会談では、海産物養殖でウニ、温室栽培でイチゴを対象に作業を進めることで合意。観光パッケージツアーの作成も申し合わせた。両首脳は、今後も国際会議のたびに会談を重ねる方針だ。

 ロシア側には、今後数年間が平和条約締結に向けた「最後のチャンス」になるとの見方もあるようだ。日本側も、政府が「一歩一歩着実に進展している」と自画自賛するだけでは領土返還の国民的機運は高まるまい。説明を尽くしながら交渉を進め、目に見える成果を積み重ねてもらいたい。