大坂選手、全米V 文句なしの新女王誕生だ

9月11日 09:25

 女子テニスの大坂なおみ選手(20)が全米オープンを制し、日本選手として男女を通じ初の四大大会シングルスの頂点に立った。ごたごたが続く日本スポーツ界の暗雲を吹き払ってくれるような活躍に拍手を送りたい。

 決勝の会場は、過去23回の四大大会優勝を誇る米国のセリーナ・ウィリアムズ選手(36)を応援する観客で埋まった。試合はペナルティーを科せられたウィリアムズ選手が主審に暴言を吐き、会場がブーイングに包まれ大荒れとなったが、そんな異様な状況でも冷静さを失わなかった。

 これまで大坂選手のツアー優勝は3月のBNPパリバ・オープンのみで、四大大会では4回戦止まりだった。しかし今大会は準決勝で過去3戦全敗の相手に、13度ものブレークポイントのピンチをしのぐなど粘り強さが光った。

 その躍進は精神面の成長が大きかったようだ。昨年末に就任したドイツ人コーチのモットーは「全ては心から始まり、体はそれについてくる」。完璧主義者でうまくいかないと感情を高ぶらせることが多かった大坂選手に寄り添い、失敗しても前向きに気持ちを切り替える大切さを植え付けた。

 日本国内では指導者による選手への暴力やパワハラが絶えない。日本の指導者も上意下達ではなく、選手目線に立って指導することがコーチング本来の役割であることを学ぶべきだ。

 2014年の全米オープンで男子の錦織圭選手が準優勝するなど、ここ数年の日本テニス界は男子が引っ張ってきた。しかし過去の歴史をひもとくと、1973年の全豪で沢松和子さんが4強入り、90年代には伊達公子さんが全米以外の全ての四大大会でベスト4まで勝ち上がるなど、むしろ女子の活躍の方が目覚ましかった。

 それでも四大大会で日本選手が頂点に届かなかったのは、体格で上回る外国人選手のパワーが大きな壁となっていたからだ。大坂選手は身長180センチの恵まれた体格。ウィリアムズ選手にひけを取らないパワーに加え、精神面をコントロールする術を覚えたことで、ストロークが安定し試合の駆け引きも進歩した。

 大坂選手は日本人の母親とハイチ出身の父親を持つ。ほかにも陸上のサニブラウン選手やケンブリッジ飛鳥選手、柔道のベイカー茉秋選手らも外国人と日本人との間に生まれたハーフだ。

 日本では1984年まで国籍法によって日本籍の女性と外国籍の男性の間に生まれた子どもは日本国籍を取得できなかった。現在は選べるようになり、大坂選手は日米の国籍を持つ。だが日本国内での差別や偏見が完全になくなったとは言い難い。大坂選手の快挙が、肌や目の色による差別をなくす社会の一歩になることを願う。

 大坂選手は試合後、ウィリアムズ選手に対して「あなたと全米の決勝を戦うことが夢だった。ありがとう」と感謝した。心打たれた人も多かったろう。心技体とも文句なしの新女王誕生である。