自民総裁選告示 論戦通じ国づくりの指針を

9月8日 09:13

 自民党総裁選は7日告示され、連続3選を目指す安倍晋三首相(63)=総裁=と、3度目の挑戦となる石破茂元幹事長(61)の一騎打ちとなった。北海道の地震を考慮して選挙活動は3日間自粛されるものの、6年ぶりの選挙戦に入る。事実上、首相を選ぶ選挙であり、両氏は20日の投開票に向け堂々と論陣を張り、国づくりの指針を国民に示すべきである。

 論ずべきテーマは多岐にわたる。まずは5年8カ月の長期に及ぶ安倍政権の総括だ。森友、加計学園問題の真相はいまだ明らかにされず、自衛隊の日報隠蔽[いんぺい]とともに政治や行政に対する国民の不信は深まった。異論に耳を傾けず、数の力で法案を成立させる強引な国会運営は、民主主義に肝心な合意形成の努力を怠っているとの批判も根強い。

 石破氏は出馬表明で森友、加計学園問題を念頭に「正直で公正、そして謙虚で丁寧、そういう政治をつくりたい」と述べた。その後も、「政府が国民に信用されなければ何も始まらない」などと、首相官邸や国会の信頼回復に取り組む必要性を訴えている。

 憲法改正も大きな争点だ。安倍氏は戦力不保持を定めた9条2項を維持した上で憲法に自衛隊を明記する考え。秋の臨時国会に党の改憲案提出を目指している。3選を果たせば最後の総裁任期となるため、来年夏までに国民投票を実施し、2020年の改正憲法施行のスケジュールを描く。

 これに対して、石破氏は2項を削除し、自衛隊を「戦力」と位置付ける全面改正が持論だ。ただし今回の総裁選では、参院選「合区」の解消や緊急事態条項新設を優先すべきと主張し、公約には2項削除を盛り込んでいない。

 共同通信社の全国世論調査では、改憲に向けた安倍氏の意向に「反対」が49%で「賛成」を上回った。拙速な改憲論議に強い抵抗感が示されたと言えよう。なぜ今、改憲が必要なのか、国民も交えた丁寧な議論が求められる。

 異次元の金融緩和によって各種経済指標は好転したが、財政再建に向けての道のりは明らかに後退した。アベノミクスの3本の矢の一つである成長戦略も、実を結んでいるとは言い難い。看板政策が毎年のように掛け替えられる中、持続可能な社会保障制度の構築や、地方創生の実効性なども問われよう。

 選挙戦は、安倍氏が党所属国会議員の8割超を固め、圧倒的優位に立つとされている。石破氏は党員・党友による地方票に活路を見いだす戦略だ。地方票の行方は安倍政権への国民の評価にもつながるだけに注目したい。

 総裁選に関して自民党は、新聞・通信各社に「公平・公正な報道」を求める文書を送付した。記事や写真の掲載面積で候補者を平等に扱うよう注文を付ける異例の内容だ。メディアへの不当な介入であり、「言論の自由」や「国民の知る権利」を脅かすことになりかねない。全くの筋違いであることを指摘しておきたい。