就活ルール廃止 大きな混乱招きかねない

9月6日 09:31

 経団連の中西宏明会長が、採用時期など就職活動のルールを定めた指針の廃止を提案し波紋を広げている。長年、時期を決めての新卒一括採用を前提としてきた日本の就活の在り方に一石を投じた形だが、一方的な採用自由化は、学生を巻き込んだ大きな混乱を招きかねない。教育や雇用環境に関わる問題であり、慎重に論議していく必要がある。

 就活ルールはこれまでも試行錯誤が繰り返されてきた。

 1953年に旧文部省と経済界、大学の申し合わせで4年生の10月を選考開始とする就職協定を制定。しかし、解禁日前に学生を採用する「青田買い」が横行した結果、97年に廃止。同年に経団連が「倫理憲章」を制定し、「採用選考の指針」で、採用スケジュールを定めてきた。

 選考開始を4年生の6月からとした現在の採用指針は、2017年の卒業生から始まり、現在の3年生が卒業する20年春まで適用される。その後の運用について経団連は今秋中に結論を出すとしていたが、組織としての決定を前に会長の個人的な案が示されたことには、唐突な印象が拭えない。

 中西氏の提案について、経団連会員など大企業の経営者からは歓迎する声が上がる。一方で、中小企業でつくる日本商工会議所などは、採用競争激化を懸念し反発している。

 共同通信が8月にまとめた企業アンケートでも、18%が就活ルールの廃止・緩和を求めていたが、27%が現行ルール継続を支持し最多だった。中西氏の提案は、経済界全体の意向を反映したものではなく、まだ生煮えの意見だろう。

 ルールが廃止されれば、採用活動が前倒しされ就活期間が長期化することは必至で、学業への影響は大きい。解禁時期を守らぬ企業も多くルールが形骸化していることは否めないが、経団連の榊原定征前会長は「勝手にやり放題では問題がある」と、歯止めとなる目安としての意義を強調していた。大企業の意向だけを優先し教育に混乱をもたらしては、経済界の社会的責任が問われよう。

 中西氏の提案の背景には、企業のグローバル化が進む中、欧米と同様に通年採用を進めなければ、国際的な人材確保に後れを取るという認識がある。そのことについて一定の理解はできるが、そもそも欧米では雇用の流動性が高く、採用は経験や能力を重視した職種別が中心だ。終身雇用を前提に、未熟な新卒者を一括採用し企業内で育てていく日本とは大きく違う。採用自由化はこうした雇用環境も含めて、多面的に論議していくべきものだろう。

 いずれにしろ、現在の2年生をいきなり自由化にさらすような拙速は避けるべきだ。もともと就活ルールについては、安倍晋三首相が経団連に順守を求めてきたという経緯がある。一定のルールを維持しながら、政府が主導して、経済界、大学などと話し合い、長期的な視点で方向性を模索してもらいたい。