防衛予算 「特別扱い」は許されない

9月5日 09:21

 防衛省は2019年度予算の概算要求で、過去最大となる5兆2986億円を計上した。18年度当初予算と比べて2・1%増、第2次安倍政権下で7年連続の増加である。例年、概算要求に含めていた米軍再編関連経費などが、今回は金額を示さない「事項要求」となった。このためこれを除いて比較すると、実に7・2%の大幅な伸びとなる。

 国の借金が膨らみ、社会保障費などの捻出が厳しくなる中、防衛費の特別扱いが際立つ。米国製武器の購入圧力をかけるトランプ大統領の影もちらつく。国民の理解は得られるだろうか。

 中国や北朝鮮情勢に対応する防衛力の見直しは必要だ。しかし財源に限りがある以上、費用対効果を見極めながら選択と集中を進めていくべきだろう。野放図な増大は許されない。

 概算要求には、秋田、山口両県が候補地となっている地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の取得関連費2352億円のほか、F35A最新鋭ステルス戦闘機や長距離巡航ミサイルなどの経費を盛り込んだ。

 防衛省は「厳しい安全保障環境の中、現実に真正面から向き合った体制を構築する」とする。しかしこうした分析は妥当なのか。

 防衛省が公表した18年版の防衛白書は北朝鮮の核・ミサイルに関して「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」とし、「新たな段階の脅威」とした17年版より表現を強めた。昨年9月に北朝鮮が核実験を行ったことが背景にある。しかしその後、米朝トップが「非核化」で合意するなど情勢は大きく変動している。

 白書は、北朝鮮について「非核化の意思を文書で示した意義は大きい」としたものの、具体的な行動を見極める必要があるとして脅威の認識を変えていない。

 中国に関しても、日中が関係改善の流れにあり、不測の衝突を回避する「海空連絡メカニズム」の運用開始に合意しているにもかかわらず、「日本を含む地域・国際社会の安保上の強い懸念」と指摘したままだ。

 なぜ、ことさら脅威を強調するのか。巨額の費用を伴うイージス・アショアの導入など防衛費増を国民に納得させるためでは、といった疑念が浮かぶ。

 米政府の対外有償軍事援助(FMS)に基づく調達が過去最大の7千億円近くとなっているのも問題だ。最新鋭の装備が購入できるものの、価格は米側の「言い値」で、導入決定後に価格が跳ね上がることもある。効果的な装備取得とはいえまい。

 年末には、今後10年程度の防衛力の在り方を示す新防衛大綱と5年間の中期防衛力整備計画の策定が控える。納得いく説明がないまま、防衛費の特別扱いを既定路線としてはならない。

 安全保障環境は、防衛力強化や新装備で構築するには限界があろう。冷静な情勢判断や、局面打開に向けた外交努力にこそ力を入れる必要がある。