参院選挙制度 抜本的見直しには程遠い

7月13日 09:15

 党利党略が過ぎるのではないか。参院の総定数242を248にする、自民党の公職選挙法改正案が参院本会議で可決された。すべての野党が反対する中、与党が数の力で押し切った。衆参両院は互いの選挙制度改正に異議を唱えない慣例があり、早ければ17日の衆院本会議で成立、来年夏の参院選から導入される見通しだ。

 改正案は、参院選の「1票の格差」是正が目的。議員1人当たりの有権者数が最も多い埼玉選挙区の定数を2増やすほか、比例代表も4増やし、合わせて6増する。

 理解できないのは、「身を切る改革」を国民に約束しながら、それと逆行するように定数を増やし、さらに比例候補の一部にあらかじめ当選の優先順位をつける「特定枠」を設けることだ。

 自民は特定枠を「少数派というべき地域の声を国政に届けるため」と説明する。2016年参院選から合区が導入された「鳥取・島根」「徳島・高知」の選挙区を指すとみられるが、19年の次回選挙でそれぞれの合区からあぶれる現職候補者2人を救済する狙いではないか。

 特定枠の導入で現行の「非拘束名簿式」の一部が「拘束名簿式」となり、有権者にとってはますます分かりにくくなるのも問題だ。特定枠の運用は政党任せで、候補者全員でなければ何人でも適用可能だ。これでは、得票数の少ない特定枠候補が当選し、大量に得票した枠外候補が落選という、新たな「1票の格差」が生じる懸念もある。

 国会は16年の公選法改正の際、合区導入への反発を和らげるため、「参院の在り方を踏まえ、選挙制度の抜本的見直しに必ず結論を得る」と付則に明記した。にもかかわらず、改正案の参院での審議はわずか6時間程度。抜本的な見直しには程遠く、本質的な議論を放棄し、党内事情を優先した結論と批判されてもやむを得まい。

 参院選改革の与野党協議会座長だった脇雅史・元自民参院幹事長は「選挙制度は国民のためであり、自民党のためではない。原点に立ち返ってほしい」と改正案を痛烈に批判する。選挙制度は民主主義の根幹にかかわる問題だ。「良識の府」の存在意義が問われている。