化血研再出発 信頼回復へ地道な努力を

7月8日 09:21

 化学及血清療法研究所(化血研、熊本市)の製薬事業が、新会社「KMバイオロジクス」に受け継がれた。血液製剤の不正製造問題の発覚から3年余り。混迷に一応の区切りを付けた形だが、経営の立て直しはもちろん、製薬事業という社会的使命を担う会社としての真価が問われるのはこれからだろう。

 経営陣と従業員は、再出発に当たり、約40年にわたって不正製造を続けた過ちの重大さを改めて胸に刻み、信頼回復に最優先で取り組んでもらいたい。

 化血研が、国の承認と異なる方法で血液製剤を製造していた事実が表面化したのは2015年6月のことだ。その後、化血研が自ら設置した第三者委員会の調査の結果、同社は国の査察で不正が発覚しないように、偽造した書類に紫外線を当てて古く見せ掛けるなど、組織ぐるみで隠蔽[いんぺい]を重ねていたことが明るみになった。第三者委は「常軌を逸した隠蔽体質」と指弾した。

 健康被害こそなかったものの、高い安全性と法令順守が求められる製薬会社としてあるまじき違法行為である。化血研は社会から強い非難を浴び、信頼は失墜。厚生労働省からは過去最長の110日間の業務停止命令を受け、組織の抜本的な見直しを迫られた。

 大手製薬会社との交渉破談や厚労省との対立、突然の理事長交代といった曲折を経て、ようやく新会社への移行にたどり着いた化血研だが、それだけで信頼を取り戻せると考えるのは早計だろう。不正製造問題への深い反省を踏まえ、信頼される製薬会社として生まれ変わる決意や目標、具体策を打ち出すとともに、再発防止への努力を地道に重ねる必要がある。新会社の動向に関心が集まる今こそ、その本気度を示す好機と言えよう。

 新会社には、明治ホールディングスと県内企業7社に加え、県が4億円を出資した。公費が投入された以上、これまでにも増して高い公益性と地域貢献が求められる。雇用と地元での本社機能の維持、主要事業の継続という3条件を守り、地域経済の中核を担い続けてもらいたい。

 事業の立て直しも急務だ。明治グループの営業網を生かした海外展開など新たな成長戦略に期待する一方、不正問題による人材流出や熊本地震の影響で遅れが指摘される研究開発にもてこ入れが必要だろう。早急に取り組まなければ、血液製剤やワクチンを安定供給する役割が果たせなくなる恐れもある。かじ取りを託された新経営陣の責任も重い。

 新会社に製薬事業を譲渡した化血研は今後も一般財団法人として存続、研究助成や顕彰などの公益事業に取り組むという。1996年に和解が成立した薬害エイズ訴訟の被告企業として、被害者への支援も忘れてはならない。薬害エイズ、不正製造問題といった負の教訓を後世に伝え、企業統治の在り方に警鐘を鳴らし続けるのも、化血研の新たな使命と言えよう。