西日本豪雨災害 実効性ある避難対策必要だ

7月10日 09:14

 自然の猛威をまたもまざまざと見せつけられた。西日本を襲った活発な梅雨前線による豪雨被害は、死者・安否不明者合わせて200人規模の未曽有の災害となった。毎年のように繰り返される梅雨末期の集中豪雨だが、これほど広範囲で同時多発的に発生するのは初めての経験だ。

 被災地では、水道や電気などのライフラインや交通インフラが途絶する中、懸命の救助、捜索活動が続いている。一方で、約2万3千人の住民が暑さの中で避難所生活を強いられており、衛生面や健康状態も心配だ。避難生活は長期に及ぶことが予想される。国や自治体は、不明者の捜索に全力を挙げるとともに、被災者の支援やケアに万全を期してもらいたい。

 今回の大雨は、蛇行した偏西風の影響で梅雨前線が九州から近畿にかけて長時間停滞。さらに今月上旬に台風7号が日本海を通過し、大量の湿った空気が流れ込んだことが要因とされる。連続発生した積乱雲が上空の風に吹かれて帯状に連なる「線状降水帯」が次々と発生し、各地で観測史上最多となる記録的雨量となった。

 気象庁は、降り始めの5日午後から「警報級の警戒が必要」と呼び掛け、6日から7日にかけては数十年に1度の重大な災害と判断した際に出される「大雨特別警報」を9府県に断続的に発令した。それでも、多大な被害が出てしまった。

 犠牲者は12府県の広範囲に及ぶ。特に広島県では、2014年にも急傾斜地の土砂崩れが発生した広島市安佐北区のほか、山間部の熊野町などで40人を超える犠牲者が出た。そうした地域における避難や土砂災害対策の難しさが改めて浮き彫りとなった。また、隣の岡山県倉敷市では、二つの河川が合流する真備町で堤防が決壊。地区の約3割が浸水する事態となった。特別警報の発令を受け市が避難指示を出したが、多くの人が自宅に残ったままだったという。

 気象庁は、11年の紀伊半島豪雨などで危険性を十分に伝えられなかったとの反省から13年に特別警報の運用を開始。また、国は土砂災害防止法を改正し、居住制限を含めた対策を強化している。ただ、それが十分に機能しているとは言い難い。

 どうすれば警報や行政の指示が正確に住民に伝わり、迅速な避難につながるのか。国や自治体は、治水、土砂災害対策と同時に、高齢者や乳幼児といった災害弱者の視点も踏まえ、実効性のある避難対策の検討を急ぐべきだ。

 幸いにも、県内では深刻な被害は発生しなかったが、12年の九州北部豪雨では25人の死者・行方不明者を出した。以来、県内では夜間の大雨に備え、明るいうちに自主的避難を呼び掛ける「予防的避難」に力を入れている。今後、こうした先進的な取り組みを全国に広げる施策も考えたい。

 従来の常識が通用しない自然災害が頻発する中、今回の豪雨被害を検証し、その教訓を今後の対策に生かしていく必要がある。