W杯日本健闘 スポーツの価値を伝えた

7月4日 09:16

 サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会決勝トーナメント1回戦で、日本代表は強豪ベルギーと激闘の末に惜しくも敗れた。

 日本サッカー界初のW杯ベスト8進出にはあと一歩届かなかったが、日本のスピード、技術、そして規律をいかんなく発揮して強豪を苦しめた内容は胸を張れるものだ。1次リーグを含め、その戦い方は日本代表の底力と可能性を示した大会だったと言えよう。

 日本代表の前評判は高くなかった。前任のハリルホジッチ監督の突然の解任劇や成績不振で、開幕前の関心はこれまでになく低調だった。32歳の本田圭佑、29歳の香川真司両選手らベテラン偏重の西野朗監督のメンバー選考は「おっさんジャパン」ともやゆされた。

 しかし、これらベテラン組の経験値は今大会の日本代表をまとめる上で大きな力となった。西野監督の巧みなマネジメントで本来の日本サッカーの持ち味を取り戻せたのではないか。

 力の劣るチームの定石は、まずは守備を固め、失点を最小限に食い止めて、速いカウンター攻撃で得点を狙うことだろう。だが、西野ジャパンは8年前の南アフリカ大会で同じく16強に進んだ日本代表とは異なり、リスクを恐れず、攻撃に重きを置いた戦い方を貫いた。「自分たちからアクションを起こし、ゲームをコントロールする」(西野監督)ことで、チームは勢いに乗った。

 ただ、ベルギー戦は世界の壁を再認識させられた一戦でもあった。ベルギーは2016年9月以降は無敗を誇るなど成長著しい。魅力ある個性的な選手が多く、その原動力は若年世代から各クラブが取り組む「個」を伸ばす育成システムにあると言われている。

 日本の主力の多くは30歳を超えており、4年後へ若手の育成が急務だ。だが、長期的な視野に立って国内でも個の力を育む指導に力を入れなければ、継続した全体の押し上げにはつながらない。

 開幕からここまで日本中が注目し、日本代表の活躍に沸いた。若者が繁華街のパブリックビューイング(PV)に繰り出すだけでなく、選手の出身地では、多くの市民がPVで深夜から未明まで観戦し、歓声を上げた。

 これほどまでに日本中が盛り上がったのは、いつ以来だろう。スリリングな展開と、追い詰められても苦境を突破する選手の頑張りにサッカーファンばかりか、一般市民も魅了された。

 最近の日本のスポーツ界は、レスリングの伊調馨選手へのパワーハラスメントや、日本大学アメリカンフットボール部の前監督が相手チームの中心選手を負傷させるよう指示した問題など、陰湿で暗い、負のイメージが広がっていた。それだけに日本代表の健闘は明るく、楽しさにあふれたスポーツ本来の価値を呼び起こさせた。

 見る者を夢中にし、チームやプレーヤーとの一体感を得られるのがスポーツの醍醐味[だいごみ]だろう。そのことをあらためて伝えてくれた日本代表の健闘に拍手を送りたい。