参院定数6増案 「身を切る改革」に逆行する

6月14日 09:20

 自民党は12日の総務会で、参院選の「1票の格差」是正に向けた公選法改正案を了承した。今国会で成立させたい考えだが、主要野党は反対を表明しており調整は難航している。改正案は総定数242を248に6増やす内容で、「身を切る改革」に逆行した党利党略の産物との批判は免れまい。

 参院は3年ごとに半数を改選するため、改選数では3増。議員1人当たりの有権者数が最も多い埼玉選挙区の改選数3を4とし、比例代表の改選数を2増させる。さらに、比例代表は候補者個人の得票数の上位から順に当選が決まるが、一部に得票数にかかわらず当選となる「特定枠」を設ける。合区対象県で選挙区に擁立できない県の候補をこの枠に載せ、救済を図るためだ。

 この案なら2019年参院選の1票の格差は、前回の3・08倍から2・98倍に緩和され、3倍未満に収まるという。現行制度を維持すれば、人口減少に伴い1票の格差が広がり合区拡大が求められるのは必至で、改選1人区を中心に議席を確保する自民には党勢をそがれる危機感があった。

 合区は、13年参院選の最大格差4・77倍を違憲状態とする最高裁判断を受け、16年参院選から「鳥取と島根」「徳島と高知」で導入された。党内や各党の反発を和らげるため、改正公選法の付則に、19年参院選に向け「参院の在り方を踏まえ、選挙制度の抜本的見直しについて必ず結論を得る」と明記した経緯がある。

 19年参院選で改選される合区対象4県の現職は全員自民議員。現行通りなら合区となるため、うち2人は選挙区からの立候補を見送らざるを得ない。今回案なら、その2人を比例「特定枠」に回し当選させることができるわけだ。

 自民党は当初、付則にある抜本的見直し、つまり合区解消を、憲法に「参院選では、改選ごとに各都道府県で少なくとも1人選出すべきものとすることができる」との条文を盛り込むことで実現しようとしていた。ところが森友・加計学園問題によって改憲の動きが停滞。来年の参院選に間に合わなくなったため今回案が浮上した。「参院の在り方を踏まえた抜本的見直し」からは程遠いと言えよう。

 野党が「定数増は国民の理解を得られるのか」と批判しているだけではない。自民党内でも十分議論が尽くされた形跡はなく、小泉進次郎筆頭副幹事長は「森友、加計問題で結論が出せずに来ている中、こういうことには結論を出す。心配なのは国民にどう映るかだ。国民をなめてはいけない」と異論を述べていた。

 自民は一時、参院改革の一環として「行政監視機能の強化」を打ち出し、合わせて合区解消の議論も進めようとしていた。だが、森友問題での公文書の改ざん・廃棄という国会を軽視するような事案に対しても対応は鈍かった。国会の在り方を党として真摯[しんし]に議論してこなかったことの証しではないか。党利党略を捨て大所高所からの議論を求めたい。