裁判員制度 幅広い国民参加へ議論を

5月17日 09:25

 2009年5月21日に裁判員制度が始まってから、間もなく10年目に入る。この9年間で制度の存在は広く浸透したようだが、運用には課題も少なくない。

 特に懸念されるのが、裁判員の候補者として裁判所に出向くよう求められても、応じない人が増え続けていることだ。裁判が始まる前に開かれる裁判員の選任手続きに参加する候補者の割合は、低下の一途をたどっている。

 最高裁によると、高齢や病気、重要な仕事などの理由で事前に辞退が認められた人を除き、選任手続きへの出席率は、09年の83・9%から年々下がり、17年は63・9%。18年も3月末までで63・6%と下落が止まらない。

 選任手続きでは、出席した候補者の中から裁判員6人と補充裁判員数人をくじで選ぶ。出席者が少なければ、裁判員の顔触れに偏りが生じやすくなる。幅広い国民の参加を前提にした制度の根幹を揺るがしかねない問題だ。

 出席率の低下について、最高裁は、審理の長期化を主な理由に挙げる。初公判から判決までの平均期間は、09年の3・7日から17年は10・6日、18年1~3月は11・6日と約3倍に延びている。

 4月に神戸地裁姫路支部で始まった殺人事件の審理期間は、過去最長の207日となる見通しだ。選任手続きでは、501人に呼び出し状を送ったが、辞退者が続出し、出席者は77人だった。

 平均的な10日余りの審理でも、参加が難しい人は多いようだ。最高裁が17年に全国5千人を対象に実施したアンケートでは、審理期間が3日までなら74・8%が参加できると答えたが、8日になると7・5%にとどまった。

 参加できない理由で最も多いのは「仕事」だ。派遣社員やパートなど非正規労働者は、参加できると答えた人の割合が正社員より低い。雇用や収入への不安からだろう。多様な年齢や職業、経歴の人が参加し、市民感覚を裁判に反映させる制度の趣旨を考えれば、好ましくない状況だ。

 もちろん、裁判員の負担に配慮する必要はあるが、審理はおろそかにできない。被告を公正に裁くために、刑罰の判断に加わる裁判員の責任は重く、ある程度の負担は避けられまい。

 裁判員への参加は、法律で国民の義務と定められている。国民に負担を求める制度という前提に立った上で、その意義や役割を伝える教育や啓発活動にもっと力を注ぐべきではないか。

 公正な審理を保ちながら、多くの国民が参加しやすい制度をどう実現するか。社会全体に関わる課題だが、制度が始まった当初と比べ、関心は薄れている。

 制度開始から来年で丸10年となり、関心は再び高まるだろう。改善に向けた議論を深める好機だ。裁判員に選ばれた従業員の有給休暇を職場に義務付けるなど、踏み込んだ検討を求めたい。

 運用実態の検証も必要だ。最高裁は積極的に情報を公開し、国民的な議論を促してほしい。