海賊版サイト遮断 議論不足の感は否めない

4月26日 09:22

 著作権者の了解がないまま、漫画などをインターネット上に無料で公開する「海賊版サイト」の問題で、NTTグループが利用者の接続を遮断する「サイトブロッキング」を行うと発表した。政府は著作権侵害対策として、ネット接続業者(プロバイダー)に自主的な遮断を促す緊急対策を決めており、これに素早く呼応した形だ。

 ただ、接続遮断は通信の秘密や検閲禁止を定めた憲法21条に抵触するとの指摘もある。今のところ法的な裏付けがない上、緊急対策に向けた政府の議論も丁寧さを欠いた。政府やNTTは接続遮断の実施について一層の説明責任を果たす必要がある。

 遮断対象は「漫画村」など3サイト。漫画の数が豊富で若年層に急速に広まり、月間計2億人超の訪問者があるという。著作権侵害の被害額は半年間で4300億円にも上るとされ、政府も悪質サイトと名指ししていた。NTTは「短期的な緊急措置」と説明、速やかな法整備を求めている。

 もちろん著作権侵害という違法行為を放置するわけにはいかない。漫画家や出版社への影響は深刻で、コンテンツ産業の衰退にもつながりかねないからだ。

 しかし、憲法が保障する通信の秘密との兼ね合いが問題となる。たとえ機械的な手法を使うとはいえ、接続を遮断するには利用者の通信履歴をチェックする必要がある。「検閲」につながりかねず、「表現の自由」に関わる問題ともいえる。

 緊急対策をまとめた政府の知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議は、接続遮断が通信の秘密に抵触する可能性を認めた上で、著作権侵害が著しく、削除要請など他の方法では権利を保護することができないといった要件を満たせば「緊急避難」として違法にはならないとの見解を導き出した。

 接続遮断が唯一認められている児童ポルノの場合、警察庁や総務省など関係省庁で幅広い検討が行われたが、今回の対策会議ではそうした議論はなかった。拙速の感は否めず、逆に政府の恣意[しい]的な判断で遮断対象が際限なく広がる危険性すら感じさせる。

 これまでのところ接続業者による遮断は行われていないが、漫画村は接続不能になり、他の2サイトも動画再生ができないなど実質的な閉鎖状態という。

 政府の緊急対策が発表された後、ネット広告会社が3サイトへの広告配信を停止する動きがあった。これが引き金となり「閉鎖」につながった可能性もある。海賊版サイトの収入源は広告とされ、接続遮断に頼らない封じ込め対策があることを示していると見ることもできよう。一方で、接続遮断には「複数の抜け穴がある」とする専門家も多い。

 通信の秘密、表現の自由とからむ接続遮断は、副作用もある「劇薬」だ。実効性はあるのか、他に方法はないのか。著作権保護に必要ならばどう法整備を行い、乱用を防いでいくか。多様な観点から議論を深める必要がある。