医師の働き方改革 医療の安全にも不可欠だ

1月16日 09:33

 病院や診療所で働く勤務医を中心に医師の長時間労働が問題となるなか、その働き方改革を議論している厚生労働省の検討会が緊急対策の素案を示した。

 厚労省が行った調査では、勤務医では男性の4割、女性の3割で1週間の労働時間が60時間を超えた。勤務時間以外にも当直や呼び出しがあり、負担の重さが指摘されている。過労死や過労自殺といった事態も起きている。

 過労状態の勤務は医療過誤の引き金にもなりかねない。医師の健康と医療の安全を守るために対策を急ぎたい。

 素案では医師の出退勤記録を的確に把握することや、時間外労働に関する労使協定(三六協定)で定めた上限時間を超える残業をしていないかの確認、設定時間の見直しを医療機関に求めている。宿直やオンコール(院外待機)、医療の進歩に対応するための自己研さんが長時間労働に拍車をかけている現実を踏まえた。

 また薬や検査手順、入院などの説明、診断書の入力といった業務を看護師や事務職など他の職種に移して医師の負担軽減に取り組むことも盛り込んだ。2018年度末までに最終報告を取りまとめる方針だ。

 政府の働き方改革実行計画は昨年、残業は繁忙期でも「月100時間未満」などと定めたが、医師への適用は5年間の猶予期間が設けられている。医師は不在だったり病気だったりした場合を除き、患者側の診察・治療の求めを拒めないとする医師法の「応召義務」があるためだが、この在り方にも踏み込むことになった。

 確かに命を預かる医師の仕事は特殊だ。患者の容体に応じて対応しなければならず、診療や手術が長引いても途中で勤務を終えることはできない。単純な労働時間制限は難しく、医師側には規制に反対する声もある。

 加えて、大学病院など地域の拠点となる特定機能病院は最先端の高度医療を提供しており、休むことは許されない。診療以外にも教育、研究といった役割があり「時間外労働の範囲が難しい」という指摘もある。

 しかし医師も同じ労働者で、同じ人間だ。その特殊性に甘えて状況を放置してはならない。知恵を出しあって難題を解消したい。

 人手不足の背景には、診療科や地域によって医師が偏在していることが挙げられる。地域医療への影響を配慮しながら配置を適正化することは労働環境の改善につながるはずだ。初期の診療はかかりつけ医が担うなど、診療所と病院の役割分担も一層進めていく必要がある。

 女性医師はこれからさらに増加する。短時間勤務など柔軟な働き方を可能にし、保育サービスなどを充実させることも課題だ。

 医師の長時間労働の問題は、患者側からすれば「当直明けで心身ともに疲れ切った医師の手術を受けたいか」という問いでもあろう。不要不急の受診は控えるなど私たちの心掛けも重要だ。