終末期医療 望む最期実現できる社会に

1月12日 09:06

 終末期医療に関する治療方針の決定手順などを定めた国の指針(ガイドライン)が改定される。内容の見直しは2007年の策定以来初めてで、厚生労働省は3月末までにまとめる方針だ。終末期の場として主に病院を念頭に置いた現行方針に対し、今回の改定では、自宅や施設でのみとりに活用できるよう見直す。


 在宅対応の推進の背景には、内閣府の意識調査でも明らかになっている「自宅での最期」を望む人が半数以上に上るという国民の意識があろう。しかし現状は自宅で最期を迎える人は1割ほどで、8割近くは医療機関で亡くなっている。在宅でのみとりに取り組む医療機関も全体の5%にとどまっている。最期の過ごし方という極めて重要な場面を自ら選択し、決定できる環境づくりが重要だ。

 「患者本人による決定」は、現行の指針も基本として位置付けている。その上で「患者と十分話し合い、合意内容を文書にまとめる」「可能な限り苦痛を緩和し、患者と家族を精神的、社会的に援助する」といった内容を定めているが、主導権を握るのは医療機関側になりがちだ。住み慣れた場所で最期まで暮らせるようにする「地域包括ケア」や在宅医療の普及といった近年の医療施策や国民の意識とは合わなくなっている。

 医療は専門的な知識が伴うだけに、患者本人や家族の意思決定を可能にする上で欠かせないのは、医療側の丁寧な説明や関わりだろう。終末期に関して近年、注目されているのは「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」という考え方だ。患者と家族、医師らが治療内容や療養場所を繰り返し話し合って決めるという取り組みで、改定版の指針もこの考え方を取り入れるという。

 日本医師会(日医)も昨年末公表した提言で、ACPを医療者が主導するよう提案。患者本人の希望を、かかりつけ医が中心となって繰り返し聞き取って意思決定を支援することを柱に位置付けている。身寄りがなく意思決定もできない患者は、かかりつけ医が本人の人生観やそれまでの治療の選択の歴史をさかのぼって調べ、最善の医療を考えるよう求めている。

 超高齢社会は「多死社会」に突入する時代ともいえよう。高齢者の増加に伴って亡くなる人が増え、団塊の世代全員が75歳以上になる2025年には年間死者数が現在より20万人多い150万人を突破。その後も増え、ピークの40年には約168万人に達すると推計されている。

 終末期は誰にも訪れる身近な問題だ。しかし、熊本市が15年に実施した「人生の最終段階の医療」に関する市民アンケートでは、受けたい医療について考えたり、家族と話したりしていない人は7割近くに及ぶ。そこで市は、あらかじめ希望する治療方法などを書き込める「メッセージノート」を発行し、区役所などの窓口で配布している。指針改定を一人一人が望む最期を選択し、実現できる社会づくりのきっかけとしたい。