貴乃花理事解任 これで一件落着ではない

1月6日 09:12

 日本相撲協会は臨時評議員会を開き、貴乃花親方の理事解任を正式に決めた。元横綱日馬富士関が昨年秋巡業中に起こした暴行事件に関する処分はこれで終わった。だが、被害者と加害者の言い分が異なるなど、事件には不透明な部分が残ったままだ。2月の理事候補選挙をはじめとする協会内部の権力闘争の様相まで呈している。とても一件落着とはいかず、大相撲ファンならずともすっきりしない幕引きとなった。


 事件は昨年10月の鳥取巡業中に起きた。巡業部長だった貴乃花親方は、弟子の貴ノ岩関が被害者となった事件を認知していたにもかかわらず、警察へは通報したが相撲協会へは知らせず、危機管理委員会の事情聴取も拒否し続けた。師匠の指示なのか貴ノ岩関も事件後、公の場に姿を見せていない。「(貴乃花親方の)言動は非難に値する」(北村正任・横綱審議委員長)、「理事の忠実義務に反する」(池坊保子・評議員会議長)と批判されてもやむを得まい。

 同親方が、改革に後ろ向きな協会執行部に不信感を抱いているためとも言われている。そうであればなおさら、沈黙したままでは社会的な共感、理解を得られるはずはない。

 もちろん、貴乃花親方だけに責任があるわけではない。加害者側の元日馬富士関は自ら引退(後に引退勧告相当)、暴行現場に同席した横綱白鵬関、同じく鶴竜関は報酬減額などの懲戒処分はあった。貴乃花親方の処分が、懲戒でもう1段階軽い「業務停止」だと協会事業への参加が禁じられるため、理事候補選挙に立候補できない可能性もあり、ギリギリの落としどころとの見方もある。ただ、日馬富士関の師匠である伊勢ケ浜親方の理事辞任に比べ重すぎるという意見もある。

 最もふに落ちないのは、11月初めに警察から事件の連絡を受けながら、危機管理の初動を怠った協会執行部自体への戒めがないことだ。八角理事長こそ3月までの報酬の全額返上を申し出たが、危機管理担当やその他の理事に責任はないのか。事態収束が長引いた根底にはひとえに、協会のガバナンス(組織統治)不全がある。

 何よりも問題視すべきは、角界では数年ごとに事件が表ざたになるなど根強い暴力の風潮がなくならないことであり、協会の真摯[しんし]な受け止めや暴力根絶に取り組む姿勢が感じられないことだ。

 2月の理事候補選挙には貴乃花、伊勢ケ浜両親方を含め、10人の定数を上回る立候補が予想されるという。一門の親方の数で当選が決まるような旧態依然とした選挙が繰り返されるようでは、大相撲の将来は暗いのではないか。

 池坊議長が「(うみを)出し切りたいというのが私の願い。自分の子どもや孫を預けられる暴力のない相撲協会にしていかないといけない」と述べたように、今回の反省を踏まえ、力士の意識をどう改革し組織を改めていくかを示し、その評価で選挙結果を決めるような姿勢が必要だ。