「桜」夕食会問題 国会で真実明らかにして

11月30日 08:05

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」の前日に毎年開いていた夕食会を巡り、安倍氏側が費用の一部を補塡[ほてん]していたことが分かった。補塡額は昨年までの5年間で計900万円を超えるという。政治資金収支報告書には記載がなく、東京地検特捜部は政治資金規正法などに違反している疑いがあるとみて調べている。


 安倍氏は首相在任中、夕食会は参加者の会費で賄われており「補塡した事実は全くない」と一貫して主張してきた。野党が「前首相は虚偽答弁を繰り返してきた」と非難するのは当然だろう。

 安倍氏側がホテル発行の領収書を廃棄していた疑いも浮上している。違法性の認識を裏付ける証拠とも言えるが、安倍氏は領収書の存在自体を否定していた。どちらが真実なのか、安倍氏自身が証人喚問など国会招致に応じて明らかにしてほしい。

 政治的、道義的責任

 安倍氏の公設第1秘書と資金管理団体の会計責任者が主導して費用の負担割合を決めていたとの指摘もあるが、一連の問題が浮上したのは1年も前のことだ。公設秘書らが事実を隠していたとしても、事務所内の調査が十分だったとは言い難く、安倍氏の政治的、道義的責任は明白だ。

 従来の主張を翻した安倍氏側に対しては、身内である与党からも批判が出始めている。補塡した費用はどこから捻出したのか。安倍氏はどの程度関与したのか。自ら進んで説明するべきだ。

 菅義偉首相の人ごとのような国会対応にも落胆を禁じ得ない。首相は衆参両院の予算委員会集中審議で、安倍内閣の官房長官として安倍氏の説明を追認する答弁をしていたことについて「事実と違った場合は当然、私にも責任がある」と述べた。だが、安倍氏側には事実関係の確認すらせず、野党が要求する証人喚問や参考人招致に関しても「国会が決めること」などと消極姿勢に終始した。

 飛び火恐れる首相

 「桜を見る会」には安倍氏の後援会関係者が多く招かれ、「税金の私物化」との批判があった。野党は、内閣府が招待者名簿を廃棄した問題についても再調査を求めたが、首相は「既に必要な調査をしており、国会でも説明してきた」と拒んだ。

 現政権への飛び火を恐れているのだろう。しかしこれでは、閣僚が不祥事で辞任するたびに「任命責任は首相の自分にある」と言いながら何ら責任を取らなかった安倍氏と少しも変わらない。捜査の進展次第では、これまでの説明に対する首相自身の責任も問われることになろう。

 来月5日が会期末の臨時国会は最終盤を迎える。首相も出席してきょう開かれる参院本会議が攻防のヤマ場となるとみられる。さらに野党は、閉会中審査の開催を要求し、年明けの通常国会でも追及を続ける構えだ。

 新型コロナ対策をはじめとする重要課題に腰を据えて向き合うためにも、首相は安倍氏に対し、国会招致や関係文書の提出に応じるよう促す必要がある。

 隠蔽し、言い繕う

 安倍前政権では、「森友学園」への国有地売却を巡る国会質疑で、事実と異なる政府答弁が計139回あったことも明らかになった。それでも政府は、自殺した元近畿財務局職員が公文書改ざんの過程を記したとされるファイルの存否さえ明らかにせず、再調査も拒み続けている。

 世論から批判を浴びそうな事案は隠蔽[いんぺい]し、発覚してもどうにかして言い繕う。国会を軽視して説明責任を尽くそうとしない悪弊が、前政権からそのまま引き継がれていることが残念でならない。「国民から信頼される政府」を目指すのであれば、そうした姿勢をまず改めるべきではないか。

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