「災害弱者」避難 個別計画の作成急ぎたい

11月21日 08:40

 高齢者や障害者らの災害時の逃げ遅れを防ぐため、政府は来年の通常国会で災害対策基本法を改正する方針を固めた。一人一人の避難方法などを事前に決めておく「個別計画」の作成を法定計画に格上げし、自治体の努力義務とする方向だ。

 大規模な災害は毎年各地で頻発しており、自力での避難が困難な「災害弱者」が死亡するケースも後を絶たない。しかし、対象者全員の個別計画を作成した自治体は全体の12%(昨年6月現在)にすぎず、作成率向上が喫緊の課題だ。専門家の中には義務化を求める意見もあるだけに、自治体は法改正を待つのではなく作成を急ぐべきだ。

 政府は東日本大震災で65歳以上の死者が6割を占めたことを踏まえ、2013年に災害対策基本法を改正。翌年から要支援者を登録する「避難行動要支援者名簿」の作成を自治体に義務付け、ほぼ全自治体がつくり終えた。現行法はさらに、名簿を民生委員や町内会などに提供し、要支援者一人一人に応じた避難経路や避難場所、支援者を決めておく「個別計画」の作成も求めている。

 ただ、個別計画に関しては内閣府指針に「作成が望まれる」と記載されているだけだ。法的根拠が弱いため、自治体ごとの取り組みに濃淡が生じている。計画は民生委員や自治会会員らが高齢者らと面会して心身の状況を聞き取りながらつくるが、プライバシーを理由に拒まれることもあるという。これではせっかくの名簿が生かされない。

 県内では全45市町村が名簿をつくったが、個別計画を作成しているのは19市町村。県南部を中心とした7月豪雨では死者65人のうち8割超が65歳以上だった。全国同様、計画づくりが急務である。

 法改正による計画促進にあたって、国は福祉関係者の協力も求める方針。高齢者らの日常的なケアを担うケアマネジャーらが関与すれば効果的と判断したようだ。しかし、高齢化の加速で介護現場は人手が不足しており、ケアマネのなり手は減少傾向が続く。要支援者の避難に福祉の視点は欠かせないが、福祉関係者に過度の負担を強いることにならないよう、慎重な対応が求められる。国は自治体への財政支援も検討しているが、それだけで福祉関係者の関与を十分引き出すことは難しかろう。

 そもそも自治体は行財政改革に伴う職員削減によってマンパワーが不足しており、計画づくりは地域に委ねられてきたのが実情だ。しかし、高齢化による民生委員や支援者のなり手不足は熊本をはじめ各地で恒常化している。自治体と地域が連携をさらに強めて、要支援者が直面している状況をいま一度把握し、個々のケースに応じた避難方法を探るべきだ。

 「千年に一度」級の大雨を想定した洪水ハザードマップ(避難地図)や、福祉避難所の公表も求められる。災害で一人の被害者も出さないよう、あらゆる手段を動員しなければならない。