携帯料金値下げ 強権的介入、自重すべきだ

10月17日 07:11

 菅義偉首相が力を入れる携帯電話料金の引き下げが実現に向けて動き始めた。大手3社のうち、ソフトバンクが大容量の料金で割安な新プラン導入を検討していることが判明。NTTドコモやKDDI(au)も具体的な検討に入った。露骨とも言える政府の値下げ圧力に、携帯各社が押し切られた格好だ。

 携帯電話は、大手3社の寡占状態が続き、料金は“横並び”と揶揄[やゆ]されてきた。政府はそこに風穴をあけ、国民に成果を示して支持につなげたいのだろう。

 料金値下げが国民生活の助けになることに異論はない。しかし、自由主義経済では価格は企業間競争の結果として決まるのが大原則だ。強権的な介入は経済に大きな問題を引き起こす恐れもあり、自重すべきだ。

 菅首相は携帯料金のうち、データ通信量20ギガバイトの大容量プランの料金が海外に比べて高止まりしていることを問題視。意を受けた武田良太総務相が「1割とかいう程度では改革にならない」とぶち上げ、大手3社と楽天のトップと個別に面会して対応を迫った。

 ただ、日本の携帯電話回線は諸外国に比べて高品質とされる。値下げによって通信設備への投資が鈍化し、つながりにくくなっても困る。

 携帯利用者を通信量別にみると、最も多いのは1ギガ~3ギガバイトのライトユーザーといわれる。通話やメール中心で時々インターネットを使うような人たちが該当し、高齢者に多い。値下げを求めるのであれば、ここを第一に考えるべきだ。加えて、消費者にとって携帯料金とは端末の月割り代金なども含む。携帯会社だけをやり玉に挙げるのは不公平だろう。

 携帯大手のうち、ドコモについては親会社のNTTが株式公開買い付け(TOB)を実施している。完全子会社化によって財務基盤を強化し、値下げに対応するのが狙いだ。だが、そもそもNTTとドコモの分離は、グループの肥大化を避け、競合各社との対等な業界間競争を促すことが目的ではなかったのか。

 NTTは旧電電公社で財務大臣が筆頭株主。ドコモが完全子会社になれば、通信行政の許認可を握る政府の意向がより働きやすくなる。公正な競争が確保されるのか注視していく必要がある。

 政府は各社に第5世代(5G)移動通信システムの整備も促している。5Gは電波の届く範囲が狭く、従来のシステムより多数の基地局が必要になる。料金値下げが各社の設備投資の足かせになる恐れもある。

 日本で圧倒的なシェアを誇る米アップル社のスマートフォン「iPhone(アイフォーン)12」の予約受け付けも始まった。この新型端末は5G機能を実装しており、次世代通信普及の起爆剤として期待が高い。ただ、人気商品頼りの5G普及には限界があろう。政府には値下げ圧力だけでなく、通信行政全体の未来図を示してもらいたい。