東京五輪簡素化 理念再構築のきっかけに

10月1日 07:11

 新型コロナウイルスの影響で来夏に延期された東京五輪の準備状況を監督する国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会と大会組織委員会が、五輪・パラリンピックで計52項目の簡素化を進めることで合意した。

 IOCのコーツ調整委員長は計画の見直しを高く評価し、「『東京モデル』として将来の大会にも参考になる」と強調している。組織委の森喜朗会長も「東京大会を人類のレガシー(遺産)としたい」と意気込む。来夏の感染状況は依然不透明ではあるが、新たな五輪像の土台が示されたことで、開催へ向けた準備が進むことになるだろう。

 商業化と肥大化が進んだ五輪の簡素化は、単なるコストカットだけにとどまらず、開催理念の再構築を迫る大きなきっかけとなるのではないか。「ウィズコロナ」の時代に即した五輪はどうあるべきか。史上初の1年延期という苦難を、新たな五輪像の確立につなげてもらいたい。

 簡素化は「大会の根幹」と位置付けられる競技、選手は対象外とし、大会関係者の削減とサービスの合理化、会場や輸送のインフラなど4分野で幅広く検討された。五輪での大会関係者の参加は想定される約5万人から10~15%減となる見通しだ。開幕直前にIOC委員を歓迎する大規模式典を取りやめ、各国選手団が選手村に入る際の入村式も実施しない。

 しかし、開閉会式の時間短縮には切り込めなかった。IOCの財源の大半を拠出し、巨額の放送権料を払うテレビ局との契約が壁となった。

 組織委は簡素化による経費削減額の精査に入り、10月7日のIOC理事会で報告する方針だ。今後は具体的な削減額が焦点になるが、延期に伴う追加費用は数千億円規模になるとみられ、経費の削減効果は限定的だろう。その上、検査などの新型コロナ対策で、費用がさらに膨らむことも予想されている。

 開催都市である東京都や国の負担増は避けられない見通しだが、コロナ禍で社会や経済が疲弊する中、五輪への公費投入に向けられるまなざしは厳しさを増している。年末にかけて本格化する関係機関による分担の議論ではさまざまな駆け引きが予想されるが、国民の納得と理解を得るためには議論の透明化と丁寧な説明が欠かせまい。

 一方、47都道府県を巡る聖火リレーは隊列の車両やスタッフの数、関連行事の装飾などが見直されたが、自治体の意向を尊重する形で従来の121日間の日程は維持された。熊本を含め、走者に決まっていた人や運営関係者は胸をなで下ろしたことだろう。

 ただ、新型コロナの先行きが見通せない中、リレーは五輪開幕の4カ月前から始まる。沿道で声援を送る人などの「3密」を、いかにして避けるのか、難しい判断を迫られる局面も想定される。安全に運営できるかどうかは、本番へ向けた試金石となろう。