社会保障 中長期の展望示し議論を

9月25日 08:01

 65歳以上の高齢者の人口は前年から30万人増え3617万人と過去最多、総人口に占める割合も28・7%と記録を更新した。2位のイタリアは23・3%で、日本の突出ぶりが目立つ。

 少子高齢化は今後も進み、30年後には現役世代が高齢者をほぼ一対一で支える「肩車型社会」が到来する。耐えられるのか。

 一方で、ひきこもり、親の年金への依存、若年介護など、困窮や孤立が複雑にからむ新しい「生活困窮者」も増え、年金や医療に比重を置いた社会保障では対応が困難な例が増えている。

 社会保障制度の機能強化と持続性、安定性の確保は日本が直面する最重要課題の一つだ。

 しかし菅義偉首相は、新型コロナウイルスの流行で落ち込んだ経済の再生を最優先し、状況次第では社会保障改革の先送りも示唆する。もちろんコロナ危機の克服は重要だが、国民の将来不安を置き去りにしたままでは真の活性化は望めまい。次世代のために、中長期的な社会保障制度のビジョンを示し議論を深める必要がある。

 菅首相は、国の基本として「自助、共助、公助」を掲げた。「できるだけ自助で」という響きもあって、野党からは「過度な自己責任論」と批判も出た。

 ただ、自助を高齢者の就労や老後に備えた貯蓄、共助を医療や年金、介護、公助を障害者福祉や生活保護、これを支える税-と考えれば、自助、公助、共助の組み合わせは社会保障の在り方の一つともいえよう。

 課題は、「まず自助」とせず、安心の基盤である公助を先に整えて地域社会という共助の礎とし、こうした「安心」が自助を支えていく、という連携の構築だろう。

 従来、社会保障制度は高齢者に手厚かったが、これを若者や子どもにも振り向けるため、前政権は「全世代型社会保障」を打ち出した。その土台として昨秋、消費税を10%に増税。一方で支え手を増やすため、希望者は70歳まで働けるよう企業に努力義務を課し、パートや非正規労働者の厚生年金加入も拡大する。

 残る課題は、75歳以上の医療費窓口負担の1割から2割への引き上げだ。負担が倍増する高齢者からの反発も予想される。菅政権にとって正念場ともいえる。

 もちろんこうした改革だけでは制度の維持・拡充は難しい。財源となる消費税の再増税に関し菅首相は「10年は考えない」と前置きしながら将来の可能性は認めた。コロナ禍の最中の増税は難しいが将来の課題である。恩恵と痛み、制度の効率化などについて今から議論と理解を深めていきたい。

 団塊の世代が75歳以上となる2025年以降、高齢者人口の増加は緩やかになり、社会保障費の急増も一段落する予想だが、それ以降は今度は現役世代が急減、社会経済を維持するマンパワー不足が懸念されている。迫る危機に正面から向き合うべきだ。