菅内閣発足 国民のための改革断行を

9月17日 07:11

 菅義偉氏を首相とする新内閣が発足した。実に7年8カ月ぶりのリーダー交代である。

 派閥に所属せず、世襲でもない自民党議員が首相となるのは異例のことだ。しかし、閣僚の顔触れを見る限り、総裁選で支援を受けた派閥の議員や、自身と関係が近い議員をバランスよく配置した印象が強い。政権の安定を重視した結果ではあろうが、新鮮味に欠ける。


 菅氏は「国民のために働く内閣」を目標に掲げ、「役所の縦割り、既得権益、あしき前例主義を打破し、規制改革を進める」と強調する。新型コロナウイルスの感染抑制と経済再生の両立をはじめとする数々の難題を速やかに解決するには、個々の閣僚も「真の改革者」であるべきだ。


 菅氏が早期の解散総選挙に踏み切るのでは、との声もあるが、まずは一つ一つの課題と誠実に向き合い、独自の戦略を打ち出して国民に結果を示すのが先だ。「安倍政権の継承」も掲げているが、ならば長期政権が社会の分断を進め国民の政治不信を高めた事実からも目を背けるべきではない。


 1強と称された長期政権には功罪が交錯する。日銀による大規模な金融緩和と財政出動、成長戦略の3本柱によるアベノミクスが景気を拡大させて株価を押し上げ、企業収益の増加をもたらしたのは事実だ。


 半面、日銀による国債の大量購入など出口の見えない金融政策、大盤振る舞いとも言える財政出動による未曽有の巨額債務は残されたままだ。コロナ対策費も国債に頼った結果、2020年度末の長期債務は1182兆円となる見通しで、8年前に比べて300兆円近く悪化する。


 菅氏はアベノミクスをさらに前進させることを言明し、新型コロナウイルス禍の不況を受けた追加経済対策にも前向きな姿勢を示している。ただ、財源については明らかにしていない。必要な政策であっても、今後は財政健全化策を一から練り直した上で取り組むべきではないか。


 少子高齢化が急速に進む「縮小社会」にあって、社会保障制度をどう維持していくかも大きな課題だ。高齢者にできるだけ長く働いてもらう政策や、年金受給開始年齢の繰り下げなど「周辺改革」に終始し、75歳以上の医療費負担を2割にする案も議論は進んでいない。菅内閣は社会保障制度改革の本丸とも言える「給付と負担」に今度こそ踏み込み、「全世代型社会保障」を実現してもらいたい。


 前政権は国論を二分するような政策では少数意見に耳を傾けることはなかった。異論を封じ、「数の力」で強行突破する手法は見直すべきだ。これからは国会を軽視せず、国民の疑問に答える姿勢を貫いてほしい。


 森友・加計学園、桜を見る会の問題などの真相究明にもリーダーシップを発揮するべきだ。安倍政治の「負の遺産」とも正面から向き合わねば、政治や行政への信頼を取り戻すことは難しかろう。