熊本豪雨1カ月 復旧は緒に就いたばかり

8月4日 07:10

孤立状態が4週間ぶりに解消し、ようやく復旧作業が本格化した芦北町白石地区=1日

 県南部を中心に襲った豪雨から4日で1カ月。球磨川の氾濫によって広い範囲が浸水した人吉市の市街地を歩くと、復旧作業をはじめ生活再建に向けた取り組みが今も緒に就いたばかりであることを痛感する。入りこんだ泥の除去や、災害ごみの搬出が一向に進まない店舗や住宅も多く、被災者らは照りつける太陽の下で黙々と作業を続けている。

 車いすを操って庭先に出たものの、片付けるべき物の多さと過酷な暑さに途方に暮れている高齢男性の姿も目にした。すべての被災者が穏やかな日常を取り戻すには、さらに長い時間と多くの支援が必要だ。

 芦北町白石地区のように、長く続いた孤立状態が最近になって解消し、復旧作業がようやく本格化した集落もある。県内のあちこちで多くの被災者が助けを求めている現実を、県全体でしっかり受け止めなくてはなるまい。

熊本地震を上回る

 県のまとめによると、今回の豪雨では65人が亡くなった。2016年の熊本地震の直接死50人を上回る大災害である。球磨村が25人で最も多く、人吉市20人、芦北町11人、八代市4人、津奈木町3人、山鹿市2人が続く。

 本紙の12、13面をぜひ読んでいただきたい。犠牲者にはそれぞれに日々の営みがあり、家族や周囲の人々との触れ合いがあったのだ。いまだに行方が分からない人も2人いる。親族らの心労は想像を絶することだろう。

 河川の氾濫などによる床上浸水は5686棟、床下浸水は2257棟に及んだ。全壊家屋は223棟、半壊は383棟。今なお避難生活を余儀なくされている被災者は1408人に上る(いずれも3日現在)。仮設住宅への入居が始まった自治体もあるが、被災者の落ち着かない日々はすぐには変わるまい。心と体の両方をいたわりながら、無理のない範囲で生活再建の歩みを進めてもらいたい。

自助も共助も弱く

 被災地の多くは、もともと高齢化や過疎化が進んでいた地域だった。このため、復旧作業をはじめとするさまざまな災害対応も、住民らの「自助」だけではなかなか進まない。

 加えて今回の災害では、新型コロナウイルスの感染拡大を懸念してボランティアが県内在住者に限定されており、熊本地震などで大きな力となった「共助」も制限を余儀なくされている。平日のボランティア不足は特に深刻だ。

 災害復旧は初期の対応が遅れれば遅れるほど被災者の重荷となり、体力と気力を奪っていく。政府は過去に例のない状況であることを十分に考慮し、人手不足を補うための施策を速やかに、間断なく打ち出すべきだ。

 球磨村ではきのうから、住宅に流れ込んだ土砂などを住民に代わって村が撤去する事業が始まった。こうした取り組みへの支援を含め、地元の負担を極力軽くする柔軟な財政対応も求めたい。

伝えたい「三重苦」

 政府は今回の豪雨を大規模災害復興法に基づく「非常災害」に指定。被災地支援の「対策パッケージ」も決めた。応急復旧関連では河川や道路などの復旧工事を国が代行。被災者の生活再建では、廃棄物や土砂の迅速な撤去や住まいの確保を柱に据え、公費解体の対象拡大や仮設住宅の柔軟な活用を図る。

 ただ、今回の豪雨では他県でも大きな被害が出ている。全国的に見れば、豪雨対応よりもコロナ対策に関心が集まっている現実もある。そうした中で、県内の被災者の声がかき消され、支援が遅れたり、行き届かなくなったりしてはならない。県は今後も、地震、コロナ禍、豪雨災害の三重苦にあえぐ現地の窮状を政府にしっかり伝えてもらいたい。