政府の景気認識 増税は妥当性欠いていた

8月2日 07:11

 政府は、2012年12月の第2次安倍政権発足とともに始まった景気拡大が18年10月で「山」を越え、翌11月からは後退局面に入っていたと認定した。景気拡大期間は71カ月で、02年2月から08年2月まで続いた「いざなみ景気」に2カ月及ばなかった。期間中の実質成長率は年平均1・2%程度で、いざなみ景気の1・6%を下回った。

 政府は19年1月、「景気回復期間は戦後最長になったとみられる」と宣言。同年10月には消費税率の引き上げに踏み切った。景気拡大時に実施して悪影響を最小限にとどめる、という「定石」に沿った増税とみられていた。

 だが実際には、「戦後最長景気」が幻に終わり景気が下降する中で増税を実施していたのだ。政府の景気認識と政策判断は妥当性を欠いていた。誰がどのように判断してゴーサインを出したのか、しっかり検証するべきだ。

 今回、景気の「山」と判断された時期は、米国と中国が互いに数度にわたって制裁関税を発動した直後に当たる。日本にとって、主要貿易相手国である両国の対立が国内産業に与える影響は大きく、民間エコノミストの間では、このころから景気後退が始まったとの見方が広がっていた。

 しかし、政府は消費税増税の影響で景気失速が鮮明になっても、月例経済報告で「回復」との景気判断を維持した。ようやく判断を引き下げたのは、新型コロナウイルスの感染拡大による打撃が顕著となった今年3月だった。認識が甘すぎたと言わざるを得ない。

 安倍政権は、消費税の8%から10%への引き上げを2度延期している。景気拡大の時期に引き上げを表明したものの、国政選挙への影響などを考慮して先送りを続けた結果が、景気のピークを1年過ぎての消費税増税である。

 景気対策で導入されたキャッシュレス決済によるポイント還元も効果は限定的だった。今年に入ると新型コロナの感染拡大に伴う外出自粛の経済的影響も重なり、政府は20年度の経済成長率をマイナス4・5%に下方修正した。

 景気の山と谷を判断する内閣府の有識者会議も、期間中の景気判断には苦慮していた。17年の会議では、当時の状況を「景気の山はつかない」としつつも「賃金が上がらず内需が弱い」「ぎりぎりの判断」「順調と受け止められるのは望ましくない」などと表現していた。

 景気判断をめぐる政府の公式見解は、内閣府が作成する月例経済報告で示されるが、表現の裁量権は政府にある。専門家の見解を顧みず強気の姿勢を貫いたのであれば、政府はアベノミクスの成果を誇りたいだけだった、と受けとられても仕方あるまい。

 現在の有識者会議は、外部の専門家を交えた景気動向指数の研究会という位置付けだ。判断には時間がかかり、委員の固定化も進んでいる。迅速かつ公正な景気判断ができるよう、大胆な改革を進めるべきだ。