少年法の適用年齢 安易な厳罰化に歯止めを

8月1日 07:11

 少年法の適用年齢を現行の20歳未満から18歳未満へ引き下げるかどうかについて、同法改正に関する自民、公明両党のプロジェクトチーム(PT)は、20歳未満を維持する案で合意した。ただ、18~19歳が犯した事件に関しては検察官に送致(逆送)する対象を広げ実質的な厳罰化を図るという。

 少年法の適用年齢引き下げは、法相の諮問機関である法制審議会で2017年2月から議論されている。今回、引き下げ派が大勢の自民と、反対派の公明が歩み寄ったことで、法制審も意見の集約に向けて動きだしそうだ。政府、与党は来年の通常国会までに改正案を提出し、成立を図る構えだ。

 だが、十分な調査もないまま逆送が機械的に行われるようになれば、保護や立ち直りを重視する少年法の趣旨から逸脱する恐れもある。安易な厳罰化が繰り返されないよう、しっかりとした歯止めを設けるべきだ。

 現行の少年法では、20歳未満の少年事件は全て家裁に送られ、家裁は家庭環境や原因を調べた上で少年院送致などの保護処分にするかどうか決めている。ただし、16歳以上が「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた」場合は原則として逆送され、20歳以上と同様に刑事裁判を受ける。

 これに対し、与党PTの合意案は、18~19歳が強盗や強制性交など「短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪」を犯した場合も原則逆送の対象に加えるとした。少年の場合は一律禁止されている実名報道も、18~19歳は起訴された段階で解禁するという。

 少年法の適用年齢について、引き下げ派は「法制度全体の整合性」を強調している。選挙権年齢を18歳に引き下げる改正公選法が16年に施行され、18年には成人年齢を同様に引き下げる改正民法も成立した。少年法もそれらと足並みをそろえ、18~19歳に相応の責任を負わせるべきだ、という考え方だ。

 ただ、18~19歳の多くは高校生や大学生で、親の扶養下にある。これらの世代が改正公選法の施行や改正民法の成立後、積極的に政治に関わる有権者や、判断力を備えた消費者に必ずしもなっていないことも考慮するべきだ。そのための教育や環境整備も追い付いていない中、刑事責任を問うことが「相応」と言えるだろうか。

 少年法が確保してきた立ち直りの機会を奪わないためにも、要件だけ満たせば逆送するようなことがあってはなるまい。家裁にはこれまで以上に慎重な判断が求められる。そのためには十分な判断材料が必要だ。家裁調査官の社会調査や少年鑑別所の資質鑑別に十分な人員と予算が手当てされているかも丁寧に点検する必要がある。

 保護や立ち直りを優先する現行制度が一定の機能を果たしてきたことには、引き下げ派にも異論はないはずだ。一部の年代だけとはいえ刑罰が優先される事態を招けば、制度の理念との齟齬[そご]も生じかねない。法制審も国会も「改正ありき」の議論は慎むべきだ。