米中対立 大国の責務自覚し対応を

7月30日 07:11

 米国と中国が対立を深めている。互いに在外公館を閉鎖させる事態にまで至り、さらなる報復の応酬のエスカレートが懸念される。両国はともに、世界の安定に寄与しなければならない大国の責務を自覚し、それにふさわしい対応を探るべきだ。

 対立は2018年からの貿易摩擦で本格化。今年の新型コロナウイルスの世界的流行、香港に対する中国の統制強化を巡り、さらに敵対した。

 米国は今月、テキサス州ヒューストンの中国総領事館を「スパイ行為や知的財産窃盗の拠点」になっていると主張し閉鎖させた。

 ポンペオ米国務長官は演説で習近平国家主席を「全体主義の信奉者」と批判。「共産主義による覇権への野望」に警戒感を示し、各国に包囲網構築を呼びかけた。歴代米政権は、中国が経済的に豊かになれば自由も尊重するようになるとみてきた。ポンペオ氏は、そのアプローチが「失敗だった」と述べ、姿勢の転換を示唆した。

 中国は対抗措置として、四川省成都の米総領事館を閉鎖させた。習近平指導部はポンペオ氏の演説を「イデオロギー対立をあおり、新冷戦をたきつけた」と批判。関係悪化の責任は「完全に米国にある」と反発している。

 トランプ米政権の対中強硬策は、大統領選をにらみ、コロナ対策の失敗から国民の目をそらすための方策だという見方がある。だが、米国では今、与野党を問わず中国への警戒感が高まっているのも事実だ。

 中国の強引な振る舞いが、国際社会で不安と不信を招いているのは間違いない。香港の自由を形骸化させ、ウイグル族抑圧への批判にも耳を貸さない。南シナ海で独断的に軍事拠点化を進めている。米国が国際的なルールの順守や人権尊重を求めるのは当然である。

 一方で、その米国の態度も一貫しているとは言えない。多国間の貿易交渉や国際機関からの撤退、核軍縮や地球温暖化対策に背を向けるなど、トランプ政権で目立つのは自国第一主義だ。世界で指導的役割を果たそうとせずに、対中包囲網だけで各国に結束を呼びかけても、説得力はないだろう。

 米中はにらみ合う一方で、貿易協議を模索しているとも伝えられている。世界第1と第2の大国は経済で結び付いており、関係を完全に断ち切ることはできない。

 日本はジレンマを抱える。米国に足並みをそろえ過ぎれば、経済面で関係の深い中国の反発を招く。中国に傾けば日米同盟に悪影響を及ぼす。グローバルな関係が深まる中、多くの国々も米中どちらか一方だけを選ぶのは難しいはずだ。

 冷戦をほうふつとさせるような2陣営の分断は、世界に決して利益をもたらさない。力のぶつかり合いで展望は開けないし、国際情勢を不安定化させるだけだ。

 とりわけ今は世界が協調してコロナ封じ込めに当たるべき時である。米中は冷静な対話によって共存を目指すべきだ。