香港安全法可決 看過できない独善的強行

7月1日 07:11

 中国が香港の統制を強化する「香港国家安全維持法」を成立させた。香港に高度の自治を認めてきた「一国二制度」の形骸化が危ぶまれる。国際社会や香港市民の反対も顧みない習近平政権の独善的な強行は、看過できない。

 法施行によって、中国政府は香港に出先機関「国家安全維持公署」を新設し、直接的な治安維持に乗り出す。国家分裂、政権転覆、外国勢力と結託して国家の安全に危害を加えるといった行為を処罰対象とする-としている。

 香港では集会や言論の自由が認められてきた。だが、今後は中国本土と同じように、共産党や政府に批判的な活動とみなされれば、犯罪行為として処罰される恐れが出てくる。

 中国全国人民代表大会(全人代)は5月下旬、香港での抗議デモの取り締まりを念頭に、新法を導入することを決定。香港立法会(議会)を関与させず、異例の短期間の審議で可決した。

 香港では9月に立法会の議員選挙が予定され、新法制定による民主派候補への影響が心配されていた。香港市民の間には、既に処罰への恐怖心から抗議デモなどの運動を萎縮するような動きが見られる。中国からの独立を求めるような主張や活動は今後、香港安全法によって封じ込められるのではないか。

 中国政府は1984年、英国からの香港返還を決めた「中英共同宣言」の際、50年間の一国二制度適用を約束した。香港を資本主義の国際経済都市として存続させることが、中国本土の発展にとっても必要だった。

 その土台となる香港基本法が90年に成立。香港政府に「行政管理権、立法権、独立した司法権」などを与えた。97年の返還実現から1日で23年となる。

 中国政府は、香港安全法の制定によっても一国二制度は維持されると主張している。しかし、独立した司法権は統治の核心である。一部の行為しか取り締まらないと言っても、中国のこれまでの姿勢を見れば、法解釈や運用によって適用を拡大させる可能性は高い。

 そもそも香港基本法は、行政長官と立法会議員選挙への普通選挙導入を掲げている。だが、それも完全な形では実現されていない。中国政府は、共同宣言の国際的な約束をほごにしたと言わざるを得ない。

 市民的自由を制限すれば、香港の国際金融センターとしての価値を低下させかねない。資本主義の「窓」として香港を活用し、世界第2の経済大国となった中国は、もはやその利用価値さえなくなったと言いたいのだろうか。

 一国二制度は台湾統一に向けて生まれた構想でもあった。それをなし崩しにするような振る舞いを見せられては、台湾の不信感も増幅させるばかりだろう。

 米国は対抗措置を打ち出し、日本政府も懸念を表明した。国際社会は協力して、中国政府に香港の自由維持を迫るメッセージを伝えるべきだ。