強制不妊報告 全容解明へさらに検証を

6月30日 07:11

 旧優生保護法(1948~96年)下で障害者らが不妊手術を強いられた問題で、医学系の学会でつくる日本医学会連合(門田守人会長)の検証検討会が報告書を公表。医学・医療関係者が被害救済に向けて直ちに行動を起こさなかったことへの「深い反省と被害者らへの心からのおわびの表明」を提言した。

 各医学会を統括する団体が「負の歴史」に向き合い、自らの責任を認めたことの意義は大きい。問題解決への一歩として評価したい。ただ一方で、被害の全容の解明と救済が、いまだなされていない現状がある。医学・医療界には、当事者としての責務を果たすさらなる徹底検証を求めたい。

 報告書では、旧法について、「医学・医療関係者が法制定に関与し、人権思想浸透後も法律の問題性を放置してきたことは誠に遺憾」と表明した。その上で、今後は出生前診断など遺伝子治療の分野で、非倫理的な方向へ進まないために、多方面からの検討が必要と強調。「同様の事案が発生しないよう、学会横断的な医学的・医療的判断を検討する組織の発足が望まれる」と指摘した。

 報告書を受け取った門田会長は「二度と起こらないようにするのが、われわれの責務だ」と述べた。そのためにも、まず問題の全体像を明らかにする具体的努力が求められるが、それはまだ不十分と言わざるを得ない。

 旧法に関わった医学・医療の各団体の取り組みにも温度差がある。日本健康学会と日本精神神経学会が既に検証を始めた一方で、日本産婦人科医会は予定していない。

 強制不妊を巡っては昨年4月、一時金320万円を被害者に支給する救済法が施行された。約1万6500人が強制的に手術を受けたと目されているが、今年5月末現在で支給を受けたのはまだ590人(熊本9人)に過ぎない。

 個人名が記載された資料の調査が進んでいないのが要因となっており、被害者特定のためにも、前身が旧優生保護法の指定医団体だった日本産婦人科医会の協力は欠かせない。今回の報告を機に、消極的姿勢の転換を求めたい。

 旧法と同様に議員立法で成立した救済法だが、「反省とおわび」の主体を「われわれ」とあいまいにし、違憲性にも踏み込まなかった。このため旧法の違憲性などを問う国家賠償請求訴訟が、熊本など全国8地裁と仙台高裁で続いており、きょう東京地裁で2例目の判決が言い渡される。

 旧法の成立過程と被害状況については、国会も今月、調査を開始した。衆参両院の調査室が国会図書館と協力して実施するという。国会も司法の判断を待つことなく、当事者として自身の責務に正面から向き合い、踏み込んだ検証を行うことが求められよう。

 旧法成立と運用では、熊本県医師会長も務めた参院議員の故谷口弥三郎が中心的役割を果たした。県内での関連資料や証言の掘り起こしも待たれるところだ。