東京一極集中 コロナ後へ分散化推進を

6月1日 07:15

 新型コロナウイルスの感染拡大では、密閉、密集、密接の「3密」を避けることが難しい大都市の脆[もろ]さが世界的にクローズアップされた。日本では特に、総人口の3割弱が集中する東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の4都県で、国内感染例の約半数までを占め、緊急事態宣言下での活動制限が経済などの中枢機能をまひさせて、他の地域にも大きな影響を及ぼすことになった。

 地震などの災害でも指摘されていた東京一極集中のリスクの高さが、改めて顕在化したと言えよう。コロナ後を見据えた「新しい生活様式」では、日本の社会構造自体を変革して、地方にもバックアップ機能を置く分散化の推進が求められる。

 総務省が4月に公表した2019年10月1日時点での人口推計によると、外国人を含む日本の総人口は前年より27万6千人少ない1億2616万7千人で、9年連続のマイナスだった。

止まらぬ人口流入

 人口が増えたのは東京圏と滋賀、愛知、沖縄の7都県にとどまった。東京圏は前年比14万5千人の増加。大阪、名古屋という他の大都市圏では人口減が続く中、流入は止まらず、一極集中は加速している。

 安倍晋三政権は、15年度を初年度とした看板政策「地方創生」で、20年中の東京圏への流入是正を最重要課題に掲げていたが、24年度への先送りを余儀なくされた。

 「地方創生」1期目では、政府機関や企業の地方移転、東京23区の大学定員の抑制などの政策を実施したものの、効果は極めて限定的だった。

 20年度からの2期目は、都市部に住みつつ副業や伝統行事への参加などで地方に関わる人を増やすという「関係人口」の拡大を打ち出した。しかし1期目の失敗を検証せぬまま、新たな施策を机上でひねり出したという印象が強く、早くも手詰まり感が漂っている。

効率性がリスクに

 1期目では、特に企業の地方移転・拠点拡充が数値目標の1割にも届かなかった。これは、国内総生産(GDP)の3割以上を占める東京圏に集中的に社員を配置することが経済活動上、効率的であり合理的であるとの企業の意識が根強いことを示すものだろう。

 しかし、今回のコロナ禍では、そうした効率性が感染のリスクとなることがあらわとなった。社員が一斉に都心部のオフィスに通って働くという、これまで当たり前とされてきた企業活動は見直しを迫られ、テレワークやオンライン会議が急速に広がった。

 デジタル技術の活用によって、社員がオフィスに集まらずとも可能な仕事が多いことを示したと言えよう。新しい働き方が普及すれば、社員は都市部に住む必要はなくなる。企業側にとってもオフィスのコスト削減につながるなど、利点は多いはずだ。

 東京圏のリスクについては、直下型地震に加え、政府の中央防災会議作業部会が3月、富士山大規模噴火を想定し中枢機能の長期間のまひを警告した。今回のコロナ禍でも流行の第2波とそれに伴う医療崩壊が懸念されている。

持続可能な社会に

 抜本的な対策には、多極分散型の国土への転換しかあるまい。こうした構造の変化こそが、災害や感染症にも強い持続可能な社会をもたらすはずだ。先に紹介したテレワークなどに加え、教育でのオンライン授業、医療でのオンライン診療など、今回のコロナ禍で広がったデジタル利用が、都市と地方との情報格差を埋めていくことを期待したい。政府や経済界が改めて長期的戦略を示すとともに、各自治体も機能分散の受け皿となるために、デジタル環境づくりなどの取り組みを強化すべきだ。