介護保険20年 制度再構築し持続可能に

4月6日 07:20

老人保健施設で入所者の食事を介助する介護職員=2日、熊本市

 介護を家族で抱え込まず、社会全体で支え合う「介護の社会化」を掲げてスタートした介護保険制度が、4月で20年を迎えた。
 家族の中でも「嫁」に負担が集中する「日本型福祉」を見直す契機となり、なくてはならない制度として定着した。ただ、高齢化による利用者増で財政難が急速に進んだ。深刻な介護人材不足にも直面している。

 介護需要がさらに増すとされる、団塊の世代全員が75歳以上になる2025年が迫る中、制度を持続可能なものに再構築する必要がある。いま一度、国民的な議論を深めたい。

 介護保険の財源は、40歳以上が支払う保険料と、国や地方の公費、利用者の自己負担で賄う。利用できるのは原則65歳以上。介護の必要度に応じて「要支援1、2」「要介護1~5」の7段階で認定を受け、訪問介護や通所介護といった在宅サービスや施設入所などを選ぶことができる。

膨らみ続ける費用

 利用者は、制度が始まった2000年4月の149万人から19年4月は487万人、総費用は00年度の3兆6千億円から19年度は11兆7千億円(予算ベース)と、ともに3倍以上に膨らんだ。

 これに伴い、65歳以上の月額保険料は全国平均で00~02年度の2911円から18~20年度は5869円に増加。当初は一律1割だった自己負担も、収入や所得に応じて2割や3割に引き上げられた。

 給付の抑制も進んだ。15年4月から、特別養護老人ホーム(特養)の新規入所を原則要介護3以上に限定。要支援の訪問介護と通所介護は、介護保険から切り離して市区町村事業に移した。

 いずれも制度を維持するための見直しだが、抜本的な対策にはなっていない。自己負担の割合は利用者の91%が1割のまま。21年度の改正に向けた議論で2割の対象拡大が検討されたが、批判を受けて断念した。サービス利用に必要な介護計画の有料化や、要介護1、2の生活援助サービスの市区町村事業への移行も、関係団体の反対で見送られた。

人手不足も深刻化

 ただ、65歳以上の高齢者数は25年には3677万人に増え、介護の総費用も政府試算では15兆3千億円に膨らむ。高齢者はその後も増え続け、42年にはピークの3935万人に達する。このままでは保険料がさらに値上がりし、特に高齢者の生活を圧迫しかねない。

 共同通信が2~3月、都道府県庁所在地と政令市の計52自治体に実施した調査では、回答した50自治体のうち49自治体が、制度の存続、維持について「懸念する」と回答した。費用の膨張に加え、サービス維持の根幹となる介護人材の不足に強い危機感を示した。

 人材難の一因は、介護の仕事の価値を認めてこなかったことにある。非正規雇用が多く、重労働の割に低賃金とされる。やりがいだけで若い人材を呼び込むのは難しく、待遇改善は急務だ。

 さらに、25年以降は働き手となる15~64歳の生産年齢人口が急減する。外国人労働者の積極的な受け入れや、介護ロボットの導入も欠かせない。

社会全体で議論を

 介護の社会化が進んだとはいえ、介護を理由にした離職は年10万人に上り、介護疲れが虐待を引き起こす事件は後を絶たない。掘り起こすべき介護需要はもっとある、と捉えるべきだろう。

 高齢者が高齢者を支える「老老介護」が社会問題化するなど、介護保険の必要性はいっそう高まっている。サービスと負担のバランスを取りながら、超高齢化社会を将来にわたって支える制度にどう軌道修正するか。「利用者本位」「自立支援」といった導入時の理念に立ち返り、地域社会全体で最善の策を探りたい。