菊池事件判決 違憲を認めた判断は重い

2月27日 08:14

 ハンセン病患者とされた男性が1952年に県北で起きた刺殺事件で殺人罪に問われ、無実を訴えたまま死刑となった「菊池事件」を巡り、検察が再審請求しないために精神的苦痛を受けたとして、元患者6人が国に損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、熊本地裁で言い渡された。同地裁は原告の請求を棄却する一方で、男性を裁いた「特別法廷」の審理の手続きについては憲法違反を認めた。

 この裁判は賠償請求訴訟ではあるが、原告側が求めているのはあくまで「菊池事件」の裁判をやり直す再審である。熊本地裁は憲法違反の手続きが再審事由になるとは認めなかったが、違憲を認めた判断は重い。被告である国、そして再審請求権を持つ検察は、改めて「菊池事件」について、被害回復の責任があることを認識すべきだ。

 「菊池事件」は、国立ハンセン病療養所菊池恵楓園(合志市)内などに設けられた事実上非公開の「特別法廷」で裁かれた。さらに捜査や審理もずさんで、男性を犯人とした物証や証言には、数々の信用性を疑わせる矛盾点などが指摘されている。にもかかわらず、男性の無実の訴えは法廷でも受け止められず、死刑判決が確定。62年に執行された。

 判決は、「菊池事件」の開廷場所指定と審理について、国の強制隔離政策を背景に「被告がハンセン病患者であることを理由とした合理性を欠く差別」とし、憲法13、14条に違反することを明確に認めた。また、「特別法廷」が公開原則を満たさなかった点についても、憲法37、82条に違反する疑いがあるとした。

 にもかかわらず「これらの憲法違反はただちに裁判での事実認定に影響を及ぼす手続き違反ということはできない」とし、再審請求の事由としなかった判断は納得しがたい。しかし、これだけ明確に違憲性が認められた以上、今回の判決で原告の請求が退けられたことが、再審請求を妨げるものでないことは明らかだろう。

 ハンセン病問題基本法は、ハンセン病問題での被害回復を国などに求めている。ハンセン病差別に起因する不公正な裁判による被害回復は、裁判のやり直ししかあるまい。

 最高裁も最高検も、ハンセン病患者を対象にした「特別法廷」の運用に違法性があったと認めて、謝罪している。それなのに、個別事案の被害回復に手を尽くさないのは、司法の怠慢ではないか。そのことは今回の判決の違憲認定によって、より明確になったと言える。

 今回の訴訟には、遺族が偏見差別を恐れて再審請求に踏み切れない中、原告らが遺族以外に唯一、再審請求権を持つ検察に対し、再審請求を再三要請しながら、十分な説明も受けないまま門前払いされてきたという経緯がある。

 このまま検察が放置を続けるのであれば、再審請求権を狭く限定している現行の再審制度にも疑問を生じさせることになろう。