新型肺炎初の死者 明確な現状分析と対策を

2月15日 07:03

 新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)に感染した神奈川県在住の80代日本人女性が、死亡した。国内で死者が出たのは初めてだ。

 沖縄県でも60代の女性タクシー運転手の感染が判明。一方、和歌山県では50代男性外科医らへの感染も確認された。

 これまでの国内感染例では、中国への渡航歴や、中国から来た人との接触歴がある場合が大半だったが、亡くなった女性や外科医には最近の渡航歴はなく、中国から来た人との明らかな接触歴も確認されていない。国内で感染した可能性が高く、新型肺炎問題は新たな段階に入ったと言える。

 こうした事態を受け、安倍晋三首相は14日、感染拡大と感染者の重症化の防止に全力を挙げる考えを示した。政府は、現状分析を明確に示し、迅速な対策を講じるべきだ。

 厚生労働省によると、死亡した女性は1月22日に倦怠[けんたい]感が出て、28日に医療機関を受診。2月1日に肺炎と診断され、入院した。6日ごろから呼吸状態が悪化し、13日に死亡したという。義理の息子である東京都の70代男性タクシー運転手の感染も確認された。

 外科医は和歌山県の済生会有田病院に勤務。1月31日に熱や全身の倦怠感が表れ、2月3~5日、微熱が続く状態で解熱剤を飲みながら出勤。8日に肺炎が見つかり10日から入院している。この病院を受診した70代男性の感染も確認されたが、今のところ「医師との濃厚接触はない」とされている。

 海外では同じコロナウイルスによる重症急性呼吸器症候群(SARS)などが、病院関係者を介して院内で拡大した例がある。感染経路などしっかりした調査が求められる。

 加藤勝信厚労相は「国内で流行、まん延している状態ではないという従来の見解を変更する根拠はない」としているが、日本感染症学会などは「既に街の中で散発的な流行が起きていてもおかしくない」との見解をまとめている。政府の対策は、後手後手の印象が拭えない。

 政府は14日、第1弾の緊急対策費として、本年度予算の予備費から103億円を支出することを閣議決定した。メーカーがマスクの供給能力を拡大するための補助金や病原体を迅速に検査する態勢の整備などが柱だ。

 新型肺炎は重症化すれば死に至る可能性があり、中国での死者は高齢者や糖尿病などの病気を抱えていた人が多い。今のところ、患者が集中する武漢市のように多数の死者が出る状況は考えにくいが予断は許されない。

 国内での感染リスクが高まっていることは確かだが、「正しく恐れる」ことが肝心だろう。そのために政府は、正確な情報を迅速に提供し国民に周知する必要がある。同時に、国内での流行を視野に、患者を受け入れる医療機関や相談窓口を増やすなど、感染拡大や重症化、死亡を防ぐための検査、医療体制の整備を急ぐべきだ。