フードバンク活動 提供しやすい法整備急務

1月23日 07:10

 農林水産省は、品質に問題がないのに賞味期限が迫っていることや包装に不備があることなどを理由に企業が販売しない食品を福祉施設や生活困窮者に無償で提供する「フードバンク」の支援強化に乗り出す。フードバンクは食品ロスの削減と貧困対策を同時に実現できる活動として注目が高まっており、社会に広く定着するきっかけになることを期待したい。

 農水省は支援策として、企業とフードバンクの運営団体などを仲介するシステムを2020年度中に構築する。新たなシステムでは提供可能な食品の種類や量、時期などを企業がオンライン入力し、団体などは必要な量や時期、受け取り場所を登録。互いに条件の合う相手を探して円滑な受け渡しができるよう橋渡しする。

 フードバンクが改善を目指す社会問題のうち、国内の食品ロスについては16年度、推計で643万トンもの食品が捨てられた。国民1人当たりでは51キロ。年間のコメ消費量にほぼ匹敵する数字で、食品メーカーや小売業者からの対策への関心も高まっている。

 貧困との関連では、フードバンク事業を運営する東京の認定NPO法人がフードバンクを利用する主に都内のひとり親183人にアンケートした結果がある。

 それによると、毎月の食費が3万円以下の家庭は半数以上。年収200万円未満で1~3人の子どもを育てる家庭が半数近かった。そうした状況の中、利用により「食生活が改善した・やや改善した」は計83%に上ったという。

 ただ、フードバンクの普及には課題もある。寄付した食品が原因で食中毒などの事故が起きた場合、責任を追及されるのではないかと懸念する企業が多いからだ。提供された食品の転売も危ぶまれている。

 フードバンク活動が1967年に始まった米国には善意の提供者を守るため、寄付された食品によって衛生上の事故が起きても、故意や重大な過失がなければ免責されると定めた法律がある。これに対して日本では、企業と運営団体が事故発生時の責任の所在や転売禁止に関するルールを明記した合意書を交わすなど、民間任せになっている。

 昨年10月に施行された食品ロス削減推進法にも、フードバンクを通じた食品の提供に伴って生じる責任の在り方について「調査及び検討を行うよう努める」との規定がある。国は、心配なく食品を提供できるようにするための法整備を急ぐ必要がある。

 県内では熊本市と玉名市にフードバンクが開設されており、企業や家庭で余った食品を募るフードドライブ活動も広がり始めている。食品ロス削減推進法は、フードバンクの運営団体に対する地方公共団体の支援も求めている。今月は県と35市町村の職員が家庭から食品を持ち寄る活動に取り組む。今後は住民も対象に、継続して食品を提供できるような仕組みづくりを、官民一体となって進めてほしい。