施政方針演説 行政の信頼回復こそ責務

1月21日 07:05

 第201回通常国会が召集された。安倍晋三首相は20日の施政方針演説で、今夏に開催される東京五輪・パラリンピックの意義を強調。「国民一丸となって新しい時代へ踏み出していこう」と呼び掛けた。

 一方で「桜を見る会」問題や、統合型リゾート(IR)事業をめぐり現職国会議員が収賄の疑いで逮捕されたことへの言及は一切なかった。行政不信への危機感が見えない姿勢のままで、「国民一丸の新しい時代」が実現できるだろうか。疑問を抱かざるをえない。

 首相は第2次政権発足時に掲げた金融緩和、財政出動、成長戦略から成るアベノミクスの「三本の矢」を挙げ、「日本はもう成長できないとする『諦めの壁』を打ち破ることができた」と述べた。

 自民党総裁任期が2年を切る中で、7年超の政権運営を自賛した格好だが、今後の経済成長をどう進めていくか具体策は見えない。五輪後には景気の下振れリスク、ピークに向かう少子高齢化など厳しい現実が待っている。政権の真価が問われるのは、むしろ五輪後の対応であろう。

 地方創生についても、転入者が増加した島根県江津市の成功例を称賛する一方で、東京一極集中が加速する全体状況には触れないままだった。「地方創生の新しい時代を共につくりあげていこう」と呼び掛けた政策に目新しさはなく物足りなさが残った。

 「戦後外交を総決算し、新しい時代の日本外交を確立する」と述べた外交問題も同様で、停滞している拉致問題や北方領土返還など、従来の主張を繰り返すにとどまった。

 首相は最後に、憲法改正に触れ「未来に向けどのような国を目指すか。その案を示すのは私たち国会議員の責任ではないだろうか」と締めくくり、宿願の達成に向けあらためて意欲を示した。

 だが、世論調査では安倍首相の下での憲法改正には、反対が賛成を上回る状況が続いている。首相が繰り返し述べた「新しい時代」の展望は、国民の感覚と乖離[かいり]してはいないか。前向きの言葉を並べるより前に、自らの足元を見つめ直し、行政への信頼を回復させる。そうした地道な取り組みこそが今、求められている責務だ。