新型肺炎 拡大防止に多角的対策を

1月18日 09:22

 中国・武漢市で相次ぐ新型コロナウイルスによる肺炎の患者が国内でも確認された。

 神奈川県居住の30代の男性で、武漢市に滞在中の3日に発熱。帰国後も症状が治まらないため医療機関を受診して分かった。現在は退院し、自宅で療養中という。今のところ、同居家族や接触した医師などに二次感染が疑われる例はなく、厚生労働省は「感染拡大の可能性は低い」としている。

 男性は患者が多発した海鮮市場には立ち寄っておらず、感染経路は不明だ。ただ、何らかの肺炎症状がある人との接触はあった。中国では新型肺炎の家族感染を否定できない事例が報告されており、限定的に人から人への感染が起きたとも考えられる。

 専門家は、現時点で過度に不安視する必要はないと強調する。ただ、感染者の周囲に発症の兆候がないか、注意深く見ていく必要はある。感染の拡大防止に向け、患者の発見と早期の対処、感染経路やウイルスの性質究明など多角的な対策が必要だ。

 武漢市が「原因不明の肺炎患者が相次いで確認された」と発表したのは昨年末。世界保健機関(WHO)は1月14日、患者から新型のコロナウイルスが見つかったと発表した。これまでに40人以上が新型肺炎と診断され、持病があった人を含む2人が死亡。多くが海鮮市場で働く人や客だった。

 コロナウイルスには重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)を引き起こすものなどがあるが、新型はこれらとは異なる。SARSはコウモリ、MERSはラクダが持っていたウイルスが原因とされ、新型も海鮮市場で取引される動物が感染源と疑われている。

 中国当局は海鮮市場を閉鎖するとともに患者を隔離。市民にマスク着用を呼び掛けるなど対応を急ぐ。WHOとも連携している。

 中国では2002年、南部でSARSが発生。当局の情報公開や対策の遅れもあって感染は世界各地に拡大し、700人以上が死亡した。その教訓があるのだろう。

 他方、市民のパニックや当局への反発を抑え込むため、事件や事故、災害の報道を規制する傾向も強まっている。今回も感染拡大に関する国内報道は目立ってはいない。新型肺炎が「あまり重症化しないため、把握できていないだけで、実は思ったより感染が広がっているのでは」という懸念もあるという。

 中国では今月下旬に春節(旧正月)を控え、帰省や旅行の大移動が始まる。「飛び火」を招く可能性もある。中国当局には正確で積極的な情報発信を求めたい。

 日本としては防疫体制は重要だが、膨大な人の移動がある以上、水際対策には限界もある。帰国後に熱やせきなどの症状があれば受診前に渡航歴を伝える、といった一人一人の心掛けが大切だ。インフルエンザや風邪が流行する時期である。人混みを避ける、手洗いやうがい、マスク着用など一般的な感染症対策も重要となる。