阪神大震災25年 教訓は生かされているか

1月17日 07:07

 阪神大震災の発生からきょうで25年の節目を迎えた。戦後初めて大都市を襲った直下型地震は、老朽化した家屋や建物を次々に倒壊させ、大火災による延焼が延々と続き、合わせて6434人もの尊い命が奪われた。

 昨年末、被災地の今を知ろうと神戸市を訪れた。市内の遊園地に設置された「慰霊と復興のモニュメント」の銘板には、亡くなった人の名前が刻まれていた。神戸港には、崩れた波止場の一部が遺構として保存されていた。とはいえ、焼け跡や仮設住宅は姿を消しており、高層の復興住宅が並ぶ姿から当時の状況をうかがい知ることは難しかった。

 大火による焼け野原から、復興を遂げた新長田地区にも足を運んだ。被災時に消防士として救助に奔走し、退職後は住民代表としてまちの再建に力を尽くした野村勝さん(81)は、各地で大きな災害が起きるたびに“想定外”という言葉が使われることが「残念でならない」と嘆いていた。住み慣れた地域から全てを奪ったあの震災の教訓は本当に生かされているのか、と。

 阪神大震災によって、避難生活などで体調を崩して亡くなる震災関連死が知られるようになり、避難所の環境整備が促された。被災者生活再建支援法は住宅再建に公的支援の道を開いた。ボランティア活動を後押しする特定非営利活動促進法(NPO法)もできた。

 その一方で、行政対応の遅れも指摘される。国と自治体は原点に返り、これまでの課題を検証して備えを拡充するべきだ。

 各自治体は震災関連死を防ぐため、避難所となる公共施設などで冷暖房設備の整備や簡易トイレの備蓄に力を入れ始めた。それでも、2011年の東日本大震災では3739人が関連死と認定された。16年の熊本地震では発生から1年の間に170人を数え、全犠牲者の4分の3を占めた。

 高齢者や障害者ら災害弱者に配慮した福祉避難所の設置も進んでいない。東日本大震災や昨年の台風19号被害でも必要性が再認識されたが、受け皿はなお足りない。

 被災後の生活再建に対する不安解消も課題だ。日本世論調査会が昨年実施した全国面接世論調査では、住宅が半壊・一部損壊しても支援金が支払われない生活再建支援法の規定を「妥当だと思わない」とする回答が78%に上った。全壊・大規模半壊した世帯に支給される最大300万円についても64%が「不十分」としている。

 政府の地震調査研究推進本部(地震本部)が集約している最新の研究成果も、各自治体の防災事業に役立っているとは言い難く、地震本部の存在感も薄くなっている。防災・減災に向けた行政対応が今のままでよいはずがない。速やかに見直しを進めるべきだ。

 熊本地震で被災した私たちにとっては、神戸の現状は約20年後の熊本の姿と見ることもできよう。神戸が残した教訓を改めて振り返り、熊本の復興に柔軟に生かす努力を続けたい。