年金制度改正 将来への課題積み残した

12月4日 08:04

 来年の通常国会で焦点の一つとなる年金制度改正の骨格が固まりつつある。

 主な議論は、パートなど非正規として働く人の厚生年金への加入促進と、働く高齢者に対する年金減額の見直しだった。

 だが、政府の当初案はいずれも与野党や経済界などの批判を受け、トーンダウンを余儀なくされた。目指す改革の方向性や意義を、明確に示せなかったことが一因であろう。

 非正規労働者が厚生年金に加入するための企業要件は、現在の「従業員501人以上」から「51人以上」に2段階で拡大する方針だ。新たに65万人が加入できる。制度の支え手を増やすとともに、国民年金だけでは不安な老後の年金収入を増やす狙いがある。

 ただ、厚生年金の保険料は労使折半のため、企業の負担は1590億円増える。中小企業には負担が大きく、移行期間を設けるなど十分な配慮が必要だ。

 現状でも要件を満たしながら加入していない労働者は推計で156万人に上る。保険料負担を嫌がる企業の加入逃れが指摘されており、対象を拡大するには、企業に対する指導も強化すべきだろう。

 企業要件は「撤廃」「21人以上」の案もあったが、業界団体の反発で見送られた。同じ労働者であるなら勤め先の規模にかかわらず適用されるのが筋ではないか。

 就職氷河期にやむなく非正規雇用となった人もいる。将来、低年金で生活保護が必要な状況を減らすためにも、政府は非正規労働者の厚生年金加入のさらなる拡大に努めてもらいたい。

 一方、働いて一定の収入がある高齢者の年金を減らす「在職老齢年金制度」は、65歳以上については現状維持の方向となった。

 当初は、減額の基準となる毎月の賃金と年金の合計を、現在の「47万円超」から「62万円超」に引き上げる考えだった。この場合、年金支給額は年約2200億円増えるが、年金財政は悪化し、将来世代の年金水準が0・2ポイント目減りする。「高所得者を優遇して将来世代に痛みを与える」と野党のみならず与党内からも批判を浴び、「51万円超」に修正した。

 しかし、制度が高齢者の就労意欲を損ねているとの前提に立った見直しのはずが、「(減額が)意欲を減退させることはない」(中西宏明経団連会長)と経済界からも疑義が出るなど批判は収まらず、結局、現行基準を維持することになった。一連の経過を振り返れば、将来世代に影響を及ぼす改革を明確な根拠もなく進めようとした印象が拭えない。

 少子高齢化が進行する日本の公的年金は、給付抑制と負担増という痛みをどう分かち合い、支え合うかが改革の基本である。今回の制度改正案は、中途半端で将来への課題を積み残したと言わざるを得ない。

 年金改革は今後も続く。現役世代はもちろん、子や孫の世代の年金も守るという視点を忘れず、しっかり議論してもらいたい。