新国立競技場 五輪後も愛される聖地に

12月2日 05:48

 来年の東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場が、開幕まで8カ月を残して完成した。

 木と緑にあふれた「杜[もり]のスタジアム」をコンセプトに、大屋根と3層のひさしにはカラマツとスギの木材を使用。縦格子には47都道府県の木材を使った。コンコースや競技場周辺にも約4万7千本の植栽を施した。

 神宮外苑の緑との調和を目指し高さも約47メートルに抑制。6万人を収容するスタンドは全階に車いす席を整えており、五輪では約500席、パラリンピックでは750席近くを用意する。

 スポーツの祭典にふさわしい、周囲の景観にもなじむスタジアムとなったのではないか。

 マラソン走者のゴールシーンはコース移転によって見られなくなったが、開、閉会式のほか、陸上とサッカーの会場として利用される。観客はもちろん、テレビで観戦する世界中の人々の記憶にも刻まれる感動的なシーンを提供してくれることだろう。

 再建には紆余[うよ]曲折もあった。世界的な建築家ザハ・ハディド氏がデザインを手掛けた当初の計画は、一時約3千億円超との試算も出た巨額の総工費に批判が噴出し白紙撤回を余儀なくされた。政府主導で新計画を練り直し、整備費は設定されていた上限を下回る1569億円にとどまった。

 ただ、気になるのは五輪閉幕後の活用方法だ。民営化を目指す方針は決まっているが、計画策定は大会後に先送りされ、将来像がはっきりしない。

 当初の構想では、陸上のトラック部分を取り除き、全面を芝で覆ってサッカーやラグビーの試合で使っていく案が有力だった。陸上競技の大規模な大会は国際基準を満たす練習用トラックがないと開催できないため、球技専用の施設にした方が合理的だと考えられていたからだ。

 しかし、国立競技場が東京体育館と結ばれたことで、体育館隣にある1周200メートルのトラックを活用しやすくなった。これを使えば、世界選手権は無理でも一定規模の国際陸上大会を招致できるとの見方も広がっている。

 旧国立競技場の歴史を引き継いで、サッカーやラグビーの名勝負を生み出す特別な舞台とする案も十分に魅力的ではある。ただ、サッカーのワールドカップ(W杯)予選やラグビーの日本代表戦は、そうそう数多く開催されるものではない。

 国立競技場は今後、年間24億円の維持費が必要となり、当然経済性も重視しなければならない。スタジアムの収益を上げるには、音楽ライブコンサートなどの開催が最も効果的とされる。そうしたイベントを催す際に使い勝手のよい機能も備えておくべきだろう。

 東京五輪の熱気と感動を伝える国立競技場で自分もプレーしたい、応援に行ってみたいと願う人も増えるに違いない。国民から息長く愛される、開かれた「聖地」となることを期待したい。