特定技能制度  待遇や人権尊重がカギに

11月18日 07:24

 4月に外国人労働者受け入れのための新たな在留資格「特定技能」の制度がスタートし、7カ月余りが過ぎた。出入国在留管理庁の発表によると、今月8日時点で新資格を得た外国人は895人。国籍はベトナム、インドネシア、フィリピン、タイなど。本年度に最大4万7550人とした政府の見込みからすると、かなりのスローペースにとどまっている。

 特定技能は介護、建設、外食、宿泊、ビルクリーニング、農業など14業種に限って、外国人の就労を認める在留資格だ。技能移転を建前とした「技能実習」や留学生アルバイトと異なり、初めて本格的に単純労働に門戸を開いた。

 資格を得るには、日本語と技能の試験に合格し、就職先と雇用契約を結ぶ必要がある。3年間の技能実習を終えた人は、試験が免除される。通算5年まで働くことができ、技能実習とは違って同業種ならば転職も認められる。このため賃金の高い大都市へ就労者が集中していくのでは、という懸念も出されている。

大慌てのスタート

 国内の経済活動の中核を担う生産年齢人口(15~64歳)は2017年10月時点で7596万人と、1995年のピークに比べ約13%も減少した。少子化が進み、日本経済は外国人労働者なしでは立ちゆかなくなっている。

 導入から7カ月を過ぎても特定技能の受け入れが軌道に乗らない理由の一つに、資格取得のための試験が国内外でうまく実施できていないことがある。14業種のうち実施されたのは、介護、宿泊、外食など6業種だけ。日本と送り出し各国の2国間で、労働者保護などの細かな手続きや制度の擦り合わせが完全にできておらず、国によっては試験実施や雇用契約がまだ結べないという事情がある。昨年末の法改正から3カ月余りでの制度始動を急いだ日本に対し、各国の対応が追い付いていない。拙速にならないように、それぞれの国の事情や要望を踏まえてきちんと態勢を整えるべきだ。

将来の「試金石」に

 日本だけでなく、中国、韓国などを含むアジア各国は、すでに労働力の獲得競争に入ったと言われている。特定技能制度はその中で、今後の日本が外国人労働者を引きつけていくことができるかの試金石になるはずだ。

 国内にはすでに36万7700人(今年6月現在)の技能実習生がいるが、待遇や労働条件をめぐってさまざまなトラブルが指摘されてきた。実習者の多くが低賃金で働き、長時間労働や賃金不払いが問題化。中には肉親の死去時に一時帰国を望んでも雇用主に認められなかったというケースもある。外国人を単に「安価な労働力」とみなす意識があるとすれば、認識を改めなければならない。日本はもはや外国人に「来てもらっている」という局面に入っている。

 特定技能制度では省令で、外国人労働者の賃金を「日本人と同等以上にする」と定めた。本人らが一時帰国を望む際にも「休暇を取らせる」とし、最終的に帰国費用がない場合は雇用主が負担することとした。外国人労働者の招致には、これら労働条件や待遇がカギになる。安全で快適な労働環境を確保し、人権を尊重していくためにも、雇用主は基準をしっかり順守してもらいたい。当局も指導を徹底してほしい。

共生社会に向けて

 政府は今後5年間で最大34万5150人の特定技能受け入れを見込んでいる。海外の例から、外国人労働者の本格的な移入は、将来的に定住化につながるという指摘もある。ゆくゆくは日本人の雇用や賃金水準にも影響するだろう。諸外国を先例として、移民労働者との間であつれきが生じないよう長期的な目配りが必要だ。共生に向けた覚悟も問われる。