米パリ協定離脱 温暖化防止妨げる愚行だ

11月8日 08:36

 世界第2位の温室効果ガス排出国として無責任極まりない愚行と言わざるを得ない。

 米トランプ政権が、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱すると国連に通告した。温暖化による異常気象が世界各地を襲っている今、被害防止の取り組みを緩めることは許されない。

 温暖化の進行は地球の生態系を脅かし、「気候危機」「地球熱化」とさえ呼ばれ、対策は待ったなしだ。わが国も殺人的猛暑や記録的豪雨に毎年のように見舞われ、甚大な被害に遭っている。

 人為的な温暖化がなければ千年に一度も起こらないような熱波や豪雨が世界各地で発生し、極域の氷床や海氷がかつてない速さで溶けている。大規模な山火事や強大なハリケーンに度々襲われている米国も、温暖化の脅威と決して無縁ではあるまい。

 パリ協定は、2016年に発効し190近い国と地域が加入する。今世紀後半に世界の温室効果ガス排出を実質ゼロにし、18世紀の産業革命前からの気温上昇を「2度より十分低くし、1・5度に抑えるよう努力する」との目標を掲げ、参加国は独自に二酸化炭素などの排出削減目標を設定する。

 トランプ氏は、そんなパリ協定を「(米国にとって)恐ろしくコストが高くつき、不公平だ」と批判する。来年11月の大統領選を控え、石炭や石油、天然ガスなど化石燃料を扱う業界や地域、そこで働く有権者を意識しての発言だろう。ただ、そうしたトランプ政権の後ろ向きの姿勢が、国際的な取り組みを揺るがしかねない。

 一刻も早く温室効果ガスの排出増加に歯止めをかけなければ、温暖化によるリスクはさらに高まり、経済や社会、地球の生態系が破滅の危機に直面しよう。米国は排出大国として相応の責任を果たすべきだ。

 トランプ政権の姿勢とは逆に、米国の多くの大企業やカリフォルニア州などの州政府が、協定を支持し、再生可能エネルギーの拡大や脱炭素を目指して排出削減を進めている。日本をはじめ各国は、米国内の協定積極派と一層連携を強め、温室効果ガス削減目標の上積みを目指す必要があろう。

 世界5位の温室効果ガス排出国である日本は、「排出量を30年度に13年度比で26%削減、50年に80%削減」との目標を掲げている。しかし、これで十分とは到底言えまい。多くの国と同様に「50年に実質的な排出をゼロにする」という長期目標に見直すべきだ。

 二酸化炭素の排出に応じて企業などに課金するカーボンプライシングの導入や強力な省エネ対策の義務付け、再生可能エネ導入拡大のための送配電網利用ルール見直しなど、脱炭素社会の実現に向け、日本も大胆な政策転換を進め先進工業国として排出量を大幅に減らすことが求められる。

 米大統領選では、温暖化対策が大きな争点になることは間違いない。日本を含む国際社会はトランプ政権に、パリ協定離脱撤回を促すための説得を続けるべきだ。