いじめ最多 深刻化防ぐ環境づくりを

10月21日 08:45

 全国の国公私立小中学校と高校、特別支援学校で2018年度のいじめの認知件数が54万3933件に達し、過去最多となった。

 心身に深刻な被害が生じる「重大事態」も前年度より128件多い602件に上った。文部科学省と各教育委員会は、いじめが年々増加、エスカレートしている実態を直視し、早期にいじめの芽を摘み、問題解決に図れるよう学校現場の環境づくりを急ぐべきだ。

 認知件数は5年連続の増加で、前年度より約3割、12万9555件の大幅増となった。県内は前年度比2・3倍の5570件と、6年ぶりに5千件を超える高い水準となっている。中でも、熊本市の件数が前年度の301件から2885件に急増し、県内全体の数字を押し上げた。

 一方、「重大事態」では、全国で骨折など心身への大きな被害が270件、年間30日以上の不登校が420件に上った。また、学校から報告があった児童・生徒の自殺は332人で前年度から82人も増え、うち9人にはいじめがあったとされている。

 認知件数が増えた背景には、いじめを広く定義した13年施行のいじめ防止対策推進法の影響が大きい。同法は、11年に滋賀県大津市で起きた中2男子いじめ自殺事件を受けて制定され、「一定の関係がある児童や生徒による行為で、対象者が心身の苦痛を感じているもの」をいじめとして定義した。

 文科省は、いじめを広くとらえることで自殺など深刻な被害につながりかねない、いじめの「芽」を早めに摘み取るよう学校現場に要望。さらに17年には定義の解釈などを示す「基本方針」を見直し周囲からはけんかやふざけ合いに見えても、子どもの受け止め方を重視していじめかどうかを判断するよう求め、潜在的ないじめの発掘と一層の認知を促してきた。

 今回の結果について、文科省は「積極的な認知を求めてきたことが大きい」と肯定的な姿勢を示している。確かに児童・生徒間のいじめ解決の第一歩となる認知の浸透は評価すべきだろう。

 しかし、身体に危害が加わったり、自殺に結びついたりする深刻ないじめが増えていることにも目を向ける必要がある。軽微ないじめも見逃さない網の目をかいくぐって、いじめがさらに潜在化、悪質化しているケースはないか。文科省は事例を詳細に分析し、今後の対策に生かしてもらいたい。

 いじめ対策には、対人関係や家庭環境などにも目を配り、児童・生徒とじっくり向き合う時間やゆとりも欠かせまい。しかし、文科省によると、公立の中学校教諭の6割、小学校教諭の3割が「過労死ライン」を上回る勤務に従事しているのが実態だ。現場任せの対応だけでは限界は見えている。

 教師の増員や適正配置、働き方の改善を進め、ゆとりのある勤務体制を整えることが、深刻ないじめを防ぐことにもつながろう。カウンセラーやソーシャルワーカーの充実や専門機関との連携強化を含めた行政の対応が求められる。