五輪マラソン札幌へ 変更に違和感が拭えない

10月19日 09:23

 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は、2020年東京五輪のマラソンと競歩の会場について「札幌市に移すことに決めた」と述べ、計画を大幅変更する考えを表明した。

 既に大会組織委員会と合意したとの認識だ。開催都市の東京都などとの調整は残っているものの、札幌開催は確実な情勢となった。

 厳しい暑さが予想され、両種目のレースは途中棄権者が出る恐れがあり、バッハ氏や組織委の森喜朗会長は、「選手第一」を強調する。その視点は歓迎だが、開催まで300日を切った時点での決断には違和感が拭えない。

 会場変更の最大の要因となったのは、9~10月に中東カタールのドーハで開かれた世界陸上選手権だろう。男女のマラソンや競歩は真夜中に実施されたが、暑さから途中棄権する選手が続出した。

 ただ、IOCはこれまで路面温度の上昇を抑える遮熱性舗装を整備し、街路樹の枝葉を大きく育て木陰を増やす取り組みなど、組織委と東京都による暑さ対策に一定の評価を与えてきた。ドーハの状況を見て、東京で同じことが繰り返されれば五輪のイメージを損ないかねないと危ぐしたのだろう。

 急転直下の会場変更は、IOCが国際陸連に提案するという極めて異例な手続きで、一部関係者の間で極秘裏に進められていたようだ。アスリート側の意見を聞いた形跡も見えず、強引に「政治決着」を図った印象が否めない。

 札幌への会場変更はそう簡単ではあるまい。IOCが神経を使う国際映像制作ばかりか、競技会場の整備や宿泊施設、ボランティアの確保、審判などの競技役員の移動、テロ対策についても綿密な計画が欠かせない。

 販売済みチケットに対する補償など、新たに発生する経費もあろう。それらの対応と負担は誰がどのように進めるのか。課題は山ほどある。組織委は混乱を招かないよう、早急に対策と準備を始め、運営に万全を期してもらいたい。

 そもそもIOCが五輪開催期間を「7月15日~8月31日」としたことにも問題があろう。背景には、五輪の主たる収入源である放送権料の5割を占める北米のテレビ局の意向が働いていると言われる。米スポーツ界は9月以降、フットボールやバスケットボールの人気競技がシーズンに入るため、五輪はそれ以前の開催が都合が良いからだ。

 1964年の東京五輪誘致の際、7~8月の日程は「気温、湿度ともに極めて高く、選手にとって最も条件が悪い」と敬遠された。それが20年の五輪立候補ファイルでは「この時期の天候は晴れる日が多く且[か]つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスできる理想的な気候である」となっていた。

 こうしたIOCや五輪招致の「ご都合主義」も、これから検証されなければなるまい。IOCが「選手第一」を本気で唱えるなら、最適の季節を開催都市が決める自由を与えるべきである。