ノーベル平和賞 アフリカ安定への支えに

10月13日 09:09

 平和を希求する強い意志と対話が国家間の争いを解決する礎であることを、あらためて各国が認識する契機としたい。

 アフリカ東部に位置するエチオピアの若き指導者、アビー・アハメド首相(43)に、今年のノーベル平和賞が授与されることになった。約20年に及ぶ隣国エリトリアとの紛争を平和裏に終結させるとともに、対立が続いてきた東アフリカ地域の安定化に寄与したことが高く評価された。

 アビー氏が首相に就いたのは昨年4月。当初は無名に近かったが「壁を取り払い、架け橋を築こう」と国内外の敵対勢力に繰り返し呼び掛け、外交、内政の両面で矢継ぎ早に改革を進めてきた。

 エチオピアでは1993年に同国から武装闘争を経て独立したエリトリアとの間で、国境線を巡り衝突が続いた。98年に武力衝突に発展し、推定10万人が死亡したとされる。アビー氏は首相就任から間もない昨年7月に国交が断絶していたエリトリアを電撃訪問し、イサイアス大統領と会談。紛争終結の合意にこぎ着けた。

 さらに、エリトリアと、対立していたジブチやソマリアとの関係改善を仲介。紛争が続いてきた地域の緊張緩和に大きく貢献した。

 事実上の一党支配が続き民主化が立ち遅れてきたエチオピア国内でも、政治犯釈放や複数政党制実施の表明、女性閣僚の積極的な登用などの改革を断行してきた。

 腐敗が後を絶たないとされるアフリカでは、政権の私物化に反発して蜂起した民衆を武力で弾圧する国も少なくない。そうした中でエチオピアのようにトップダウンで改革を推し進める例は珍しい。ノルウェー・ノーベル賞委員会が今回の授賞を通し、アビー氏の手腕がアフリカ政治の模範となることを期待するのもうなずける。

 一方、同国内では急激な改革に反発する勢力の活動も続く。昨年6月、演説中の氏を狙った爆発事件で100人以上が負傷。今年3月には反政府勢力とみられるグループが車を襲撃し、鉱山事業に携わっていた日本人女性ら5人が死亡する事件も起きた。不安定な状況があることは否めない。

 このため、改革は道半ばでありアビー氏の受賞は時期尚早とする意見も一部にはあるという。

 これに対しノーベル賞委員会のレイスアンデルセン委員長は「和平や民主化は短時間では成し遂げられない」とし、「アビー氏の努力は評価に値する。奨励するべき時だ」と言明。過去を顕彰するだけではなく、いま平和に尽力する人を後押しするのも同賞の役割との意思を強調した。

 経済開発が進み、人口増加が続くアフリカは「最後の巨大市場」とも呼ばれる。半面で、根深い民族対立を背景にした紛争やテロ、厳しい気候からくる貧困、医療インフラ不足など多くの課題を抱えているのも、この大陸の現実だ。

 今回の平和賞に込められた呼び掛けを欧米や日本を含めた国際社会で受け止め、アフリカの真の安定と成長を支えていきたい。