豚コレラ 決断遅れたワクチン接種

9月22日 08:35

 農林水産省が、豚コレラのまん延を防ぐため養豚場の豚へのワクチン接種方針を決めた。これまでの慎重姿勢からの大きな方針転換だが、早期の封じ込めに失敗したのは明らかで、対応は後手に回ったと言わざるを得ない。

  豚コレラは、豚やイノシシに感染する病気で、発熱や食欲不振などの症状が出る。致死率が高く、感染が確認された養豚場は全ての飼育豚を殺処分しなければならない。ただ、人にはうつらず、感染した豚の肉を食べても問題ない。

  国内では1992年に熊本県錦町で発生した以降なかったため、国際獣疫事務局(OIE)から撲滅状態にある「清浄国」と認められていた。しかし、昨年9月、岐阜市で感染を確認。これまで養豚場や畜産試験場の飼育豚では岐阜、愛知、三重、福井、埼玉、長野の6県に広がっている。

  ウイルス拡散の主な要因とされているのは野生のイノシシだ。農水省は養豚場の衛生管理の徹底やイノシシの侵入を防ぐ防護柵の設置を指示するなどして封じ込めようとしてきた。しかし、効果が上がらないまま今月、一大産地の関東へ感染が及んだことで、ワクチン使用へとかじを切らざるを得なくなった。

  農水省が二の足を踏んだのは、豚肉輸出の妨げになるとの懸念があったためだ。ワクチンを使えば非清浄国と見なされ輸出が難しくなり、清浄国復帰にも時間がかかる。  ただ、2018年の日本の豚肉輸出額はまだ約8億円で実績に乏しい。輸出拡大を目指す姿勢は理解できるが、多くの養豚農家が殺処分に苦しむようでは意味があるまい。最優先すべきは生産体制の維持である。

  1年前の発生以降、清浄国の地位は一時停止中で、OIEの規定では2年以内に収束しなければワクチンを使わなくても清浄国から外れるため、既に残された時間は少なかった。ワクチン使用を求める発生県の知事や養豚農家の切実な訴えに耳を傾け、もっと早くに決断すべきだった。

  農水省は感染拡大防止のためのワクチン接種が可能になるよう防疫指針を改定する意向で、発生した県を中心に地域を限って接種することを検討している。有識者の意見も踏まえて対象地域を絞り込んだ上で、都道府県知事がワクチンを使用するかどうかを最終判断する仕組みにするという。

  ワクチンを使った地域については、接種していない域外の豚と区別して管理するため、養豚場や加工場の間の生きた豚の移動や、食肉販売店や飲食店などへの流通はその地域内にとどめるよう制限する方針だ。

  しかし、ワクチン接種による予防効果には個体差があり、感染を完全に防げるわけではない。流通の混乱や接種した豚を消費者が買い控える風評被害の防止、ワクチンの増産など課題は山積みで、これからも豚コレラとの闘いは続く。これ以上後手に回ることなく、迅速な対応を求めたい。