韓国人訪日客減少 地域経済への影響心配だ

9月21日 08:07

 韓国からの訪日客が急激に減少している。観光庁が18日に発表した推計によると、8月に来日した韓国人旅行者は30万8700人で、前年同月に比べて48・0%も減った。

 訪日客全体でも、前年同月比2・2%減の252万100人となり、台風や北海道地震の影響を受けた昨年9月以来のマイナスに沈んだ。トップの中国は増えたものの、韓国の落ち込みを補えなかった。日韓関係の悪化がはっきりとインバウンド(訪日外国人)の数字に表れた形だ。

 政府は東京五輪・パラリンピックの開かれる2020年に訪日客を4千万人にする目標を掲げる。菅義偉官房長官は18日の会見で「韓国からの訪日者数は大幅な減少となった一方、中国や欧米、東南アジアからは大幅増となっている」と強調したが、韓国人旅行者の減少が、達成が視野に入ってきた政府目標の阻害要因となっていることを肝に銘じるべきだ。

 大分県が発表した、ホテルや旅館など主要施設の宿泊者数(速報値)でも、韓国人旅行者は前年8月に比べ67・8%減り、熊本地震の影響を受けた16年5月以来の低水準だった。韓国から近い九州にあって、別府などの有名温泉地を抱える大分県では近年、外国人宿泊者の約6割を韓国人が占めており、同じ九州の熊本、長崎、福岡などを訪れる韓国人旅行者も軒並み減少しているとみてよかろう。

 観光を地域産業の柱の一つにする九州にとって影響は深刻で、地域経済への打撃を憂慮せざるを得ない。

 韓国人訪日客の減少に対し、長崎県は宿泊業者らへの緊急融資を開始。沖縄県は韓国の旅行社と商談会を開くなど、九州の各自治体では対策に本腰を入れ始めた。民間レベルでも政治的な対立に引きずられず、冷静に交流を続けることが肝要だろう。

 元徴用工問題に端を発した日韓両国の対立は、7月初めから今月までに互いに輸出管理の優遇対象から相手国を除外する異常事態に発展。その間、韓国が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄したことで、通商から安全保障分野にまで軋轢[あつれき]が拡大した。

 財務省が公表した8月の貿易統計(速報)によると、日本から韓国向けの輸出は前年同月比9・4%減の4226億円に落ち込んだ。中でも食料品は40・6%減と激減しており、韓国での不買運動によるとみられている。

 韓国人訪日客の落ち込みは一方通行ではなく、韓国を訪れる日本人も減少しているとみて間違いない。泥沼化する政治的な対立は、日韓両国民の間に「嫌韓」「反日」の感情をあおり、その影響は経済や文化・スポーツなどの民間交流にも及んでいる。両政府は事態を傍観すべきではない。

 むやみに対立を長引かせることが双方の国益にとってマイナスであることは自明のことだろう。これ以上の悪影響を回避するために、日韓両政府は対話の窓口を広げ、現実的な打開策を探るべきだ。