内閣改造 丁寧な合意形成に努力を

9月12日 08:06

 安倍晋三首相(自民党総裁)は11日、内閣改造と党役員人事を行った。内閣改造は閣僚19人のうち初入閣13人を含む17人が交代。小泉進次郎氏の環境相への抜てきはあったものの、全体的には側近重用が目立った。また、政権の骨格と位置付ける麻生太郎副総理兼財務相と菅義偉官房長官は留任。党役員でも二階俊博幹事長と岸田文雄政調会長は続投となった。

 首相自らが掲げた「安定と挑戦」のキーワードのうち「安定」を優先させて政権基盤を強化した上で、首相の宿願である憲法改正につなげたいとの思いが透けて見える布陣と言えよう。

 初入閣13人は安倍内閣では最多だが、各派閥の入閣待機組をバランスよく配した上で、官房副長官を務めてきた萩生田光一氏ら首相側近を起用した。総務相の高市早苗氏と厚生労働相の加藤勝信氏の再起用組も、思想信条が近く首相の信任が厚い。一方で昨年の総裁選で戦った石破茂元幹事長の派閥からの閣僚登用は見送っており、内向きの「お友達内閣」とのそしりは免れまい。

 まだ衆院当選4回で先の総裁選で石破氏に投票した小泉氏の抜てきは、数少ないサプライズだった。人気の高さを政権に取り込みたいとの思惑があるようだが、環境省は、水俣病、福島第1原発事故などで、解決を先延ばししてきた多くの難題を抱えている。

 水俣病では特別措置法施行から10年たっても実施されていない不知火海周辺住民の健康調査、原発事故では除染で出た汚染土壌の処分-などでイメージ通りの実行力が発揮できるのか。人気先行型だった手腕の真価が問われることになろう。

 安倍首相は参院選で憲法改正勢力3分の2の維持を逃したものの、2020年の改正憲法施行という目標は変えていない。11日の自民党役員会でも「憲法改正を党一丸となって力強く進めたい」と述べた。10月からの臨時国会は、首相が公約に掲げた9条への自衛隊明記を含む憲法改正論議が焦点となり、懸案の国民投票法改正案の成立を目指すことになろう。

 しかし、共同通信社が8月に実施した世論調査では憲法改正反対が52・2%だったのに対し、賛成は35・5%だった。拙速な審議を慎み、国民を交えた議論と理解を得る努力をすべきだ。

 安倍政権が憲法に先んじて取り組むべき課題は山積している。泥沼化した日韓外交、今月中の協定署名を目指す日米貿易交渉、目前に迫った消費税増税、目玉政策とする全世代型社会保障改革の実現など、難しいかじ取りが迫られる。

 首相の党総裁としての任期はあと2年。自身のレガシーづくりとして憲法改正に前のめりになっていては、国民の意識とは乖離[かいり]するばかりだろう。安倍政権にまず求められるのは、多様な課題について国会論戦から逃げることなく、丁寧な合意形成を目指すことだ。各閣僚、党役員にもそれを強く認識してもらいたい。