「嫡出推定」規定 無戸籍解消へ早期改正を

9月10日 08:05

 離婚後300日以内に生まれた子どもは前の夫の子とみなすという民法の「嫡出推定」規定について、法制審議会の部会が見直しに向けた検討を始めた。明治時代から続く規定で、出生届を出さず無戸籍の人が生じる主な原因とされている。多様化する現代の家族の在り方を踏まえ、問題の解消へ早期改正が必要だ。

 現行の規定は、女性が再婚から200日経過後に出産した子は現在の夫の子、離婚や死別した日から300日以内に生まれた子は前の夫の子と推定すると定める。離婚と再婚が同時の場合、201日目から300日目に生まれた子の父親推定が混乱することから、女性には100日間の再婚禁止期間も設けられている。

 養育義務を負う父親を早く確定し、法律上の父子関係を安定させて子の利益を図るのが目的だ。1898(明治31)年施行の旧民法の規定を引き継いでいる。しかし、120年以上も前に考えられただけに、時代にそぐわなくなり、弊害も大きくなっている。

 例えば、夫の家庭内暴力(DV)から逃れて別居中か離婚直後に、女性が新しいパートナーとの間にできた子を出産した場合、300日規定によって、前夫の子とみなされてしまう。戸籍には前夫の子と記載されるため、これを避けようと出生届を出さず、子が無戸籍となる問題が生じている。

 法務省が把握している無戸籍者は今年6月時点で830人に上り、約8割は嫡出推定が原因とされている。民間団体の推計では1万人以上ともいわれる。

 戸籍がないと、原則として住民票やパスポートが取得できないなど、行政サービスが十分に受けられない。進学や就職、結婚などにも支障が出る。社会生活でさまざまな不利益を被り、人権を損ねる深刻な問題だ。

 法制審の部会では、法務省の有識者研究会がまとめた見直し案を参考に論議を進める。

 見直し案では、女性が離婚して300日以内に出産した子は、その時点で再婚していなければ前夫の子、再婚していれば現夫の子とみなす。妊娠をきっかけに結婚する夫婦が増えているため、結婚から200日以内に生まれた子も現夫の子とみなす。これに伴い、100日間の再婚禁止規定は不要とした。また、自分の子ではないとの嫡出否認の訴えも、夫だけではなく、子や母からも申し立てができるよう拡大を提案した。

 科学技術の発達で、DNA鑑定により親子関係を容易に確認できるようになった。一方で、第三者の精子を使うなどした生殖補助医療で生まれる子もいる。現代の親子関係は複雑化している。さらに女性の社会進出など、時代の変化に広く目配りした、十分な論議が求められる。

 長年にわたり嫡出推定の問題点を放置してきた政府や国会の責任は重い。子どもの権利を守ることを第一義として早期の法改正とともに、現在戸籍がない人たちへの支援も検討すべきだ。